研究課題/領域番号 |
05044028
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
井上 久遠 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30021934)
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研究分担者 |
NURMIKKO A.V アメリカ合衆国, ブラウン大学・物理学科, 教授
MYSYROWICZ A フランス共和国, 高等理工科大学(エコールポリテクニック)応用光学研究所, 部長
黒田 隆 北海道大学, 電子科学研究所・学振, 特別研究員
吉田 幸司 北海道大学, 電子科学研究所・学振, 特別研究員
南 不二雄 東京工業大学, 理学部, 教授 (30200083)
アルト ヌルミコ ブラウン大学, 物理学科 (アメリカ), 教授
アンドレ ミジロヴィッツ フランス高等工科大学, 応用光学研究所, 研究部長
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1994年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1993年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | 非線形光学 / 励起子 / 励起子分子 / 量子閉じ込め系 / 二光子共鳴 / 超高速現象 / レーザー分光 / 超格子 / II-VI超格子 / 共鳴SHG / 二光子吸収 |
研究概要 |
量子閉じ込め系としてII-VI化合物半導体量子井戸(超格子)を対象として励起子の特性を明らかにし、同時に、励起子が関与したいくつかの新しい非線形光学現象を初めて観測するなど多くの成果を上げた。 1. II-VI量子井戸の代表的系であるZnSe/ZnS超格子の励起子構造を明らかにした。(1)2光子吸収分光法を駆使して、井戸層であるZnSeの伝導帯と価電子帯のそれぞれのバンドオフセット値を初めて実験的に決定した。(2)次に、同じく2光子吸収法の選択則を利用してP励起子の構造を明らかにし、また励起子の束縛エネルギーE_xを決定した。特に、E_xの値が、量子閉じ込め効果によりZnSeのバルク値と比べて2倍以上大きくなる画期的事実を見い出した。(3)II-VI系超格子系で初めて励起子分子の存在を明らかにした。励起光強度を強くすると励起子分子からの発光が生ずることに加えて、最も直接的な検証法である直接2光子吸収法により実証したものである。同時に、励起子分子の束縛エネルギーE_<xx>が異常に大きく安定であることを明らかにした。(4)この超格子の対称性の異なる1S,2Pのそれぞれに2光子共鳴して、コヒーレントな第2高調波光(SHG)が発生する現象、すなわち2光子共鳴SHG現象を発見し、その特性、共鳴の大きさの程度を実験的に解明した。また、発生の微視的機構も解明した。(5)LOフェノンによるインコヒーレントなハイパーラモ散乱(2光子ラマン散乱)の確立が、2P励起子の2光子共鳴により著しく増大する新しい現象を見い出して、その特性などを明らかにした。 2. 伝導帯のバンドオフセット値(10meV)が小さいZnSe/ZnS_xSe_<1-x>量子井戸(x=0.18)の励起子構造を解明した。また逆に、この系がエビ成長の際の下地結晶のGaAsと格子整合するために良質な超格子であることを利用して、新しい非線形光学現象を開拓することに成功した。(1)まず通常のハロゲン光源を励起に用い、P偏光の平行ビームを試料にブリュスター角で入射させた場合の反射分光法が超格子などの薄膜試料の励起子構造並びに界面の不均一性の知見を得る上で極めて有用な方法であることを実証した。(2)この手段を駆使して、井戸層の厚さが薄いこの超格子(d<80A)が、界面での一原子層のゆらぎが励起子のボ-ア直径より大きい、いわゆるテラス構造になっていることを明らかにした。(3)フェムト秒パルス光のブリュスター角反射信号の超高速時間減衰の観測により、分極のコヒーレントな自由誘導減衰が容易に観測できることを世界で初めて明らかにした。同時に、先の(2)で述べた、井戸層の厚さが一層異なるため生ずる励起子の遷移エネルギーの僅かな差をフェムト秒域の量子ビ-トとして観測し、(2)の事実を裏ずけた。 (4) 以上の基礎知見を基にして、同じくブリュスター角配置による4光波混合現象が、従来の方法と比べて良い感度で観測できることを初めて明らかにした。(5)この配置での4光波混合現象を詳細に実験的に調べることにより、励起子分子が存在する事実を実証した。これとは独立に、光励起強度を上げていくと励起子分子からの発光とは別に励起子発光が強く生ずる事実、並びにその励起強度依存性が1.5乗のベキに従っていることも明らかにし、4光波混合の結果と矛盾しないこともわかった。また、井戸層の厚さが19A,24A,50A,98Aの4種類の超格子で同様な結果を得た。 (5) その結果、この系では伝導帯の電子の量子閉じ込め効果が小さいため、励起子の束縛エネルギーの増大は、バルクの値に比べて高々10〜20%であるのに対し、励起子分子のE_<xx>は80%強の増大を示す事実が明らかとなった。物理的にも、将来の光素子としての応用の観点からも重要な成果である。 3. CdS並びにCuBr量子微結晶(量子ドット)の双方の試料で電子準位に2光子共鳴により生ずる、SHG散乱現象並びに共鳴ハイパーラマン散乱現象を初めて観測する成果を上げた。
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