研究課題/領域番号 |
05044039
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高野 穆一郎 東京大学, 教養学部, 助教授 (90012426)
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研究分担者 |
OSIPENKO A.B ロシア科学アカデミー, 極東支部, 研究員
FAZLULLIN S. ロシア科学アカデミー, 極東支部, 主任研究員
杉森 賢司 東邦大学, 医学部, 講師 (30130678)
鈴木 勝彦 東京大学, 教養学部, 助手 (70251329)
松尾 基之 東京大学, 教養学部, 助教授 (10167645)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1993年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | 火山 / 火口湖 / ポリチオン酸 / 希ガス / 同位体比 / 火山ガス / 硫黄バクテリア / 重金属 |
研究概要 |
平成5年8月2日から9月6日までの期間、ロシア、カムチャッカ半島において、火山の熱水系の調査研究を行った。ロシア側からは共同研究者2名の他同国火山研究所の多数の研究員の協力が得られた。調査地域は主要都市であるペテロパブロフスク・カムチャツキ-市の南方に位置する活火山、ムツノフスキー火山火口およびその周辺の熱水帯、同市周辺の温泉鉱泉地域、同市北方のカリムスキー火山周辺の熱水帯、隣接のマリ-、セミアチク火山の火口湖の四地域である。当初予定したウゾンカルデラ地域はロシア側の事情で調査はできなかった。全体としてほゞ予定通りの日程で計画した調査を終了することができた。調査中の事故などは皆無であった。 1.ムツノフスキー火山地域 この火山の火口には、かつて火口湖が存在した。現在は湖底が露出し高温の火山ガスが放出されている。その中には泥水中に放出しているものも多数あり主としてガス一水相互作用を調べる目的で水および残ガスの採取を行った。火山ガス一水の反応で生じるポリチオン酸はこの地域の水のなかにはほとんど検出されなかった。これは水温が沸点と高く、pHは0.3という強酸性であるため、ポリチオン酸の安定生成条件をはづれているためと思われる。また水中への元素硫黄の析出がほとんど見られなかったことから火山ガスのSO_2/H_2S比が高いことも一因であろう。火山ガス中の^3He/^4He比は6.4〜7.8(R/Ra)の範囲であった。 2.ペトロパブロフスク周辺地域 この地域の温鉱泉水の採水およびガスの採取を行った。ガスを伴うのは鉱泉であり、特にこの地域の地震予知に用いられている鉱泉3カ所のガスの採取を行い、^3He/^4He比を測定した。その比の範囲は であった。 3.カリムスキー火山周辺地域 カリムスキー火山南麗の低温の重炭酸鉄泉の採水およびガスの採取を行った。温泉水は単純泉であり特に特徴は見られなかったが温泉ガス中の^3He/^4He比は島孤としては異常に高い(8.07〜8.66)値を示した。温泉自身は活動を長期中止した火山に特徴的な泉質を示しているが、ヘリウム同位体比は高いので、不治性ガスの注入があるものと思われる。この地域の希ガス同位体比の測定データはほとんど無く、今後のこの地域の火山活動の全体像を理解する資料として貴重である。 4.マリ-.セミアチク火山地域 1992年夏に第1回目の調査を行ったが、その調査を踏えてこの火山の山頂に存在する火口湖の観測を行った。火口湖の湖盆形態の調査を現地で組み立てたボ-トを使用して行ったが、まづ超音波測深器による連続深度測定を実行した。別にロープによる測深を行い、総合的な湖盆形態の把握が可能となった。この結果、この火口湖は直径550mのほゞ円形をしており、最大深度は117mであった。湖心やや西北よりの最深部よりガスが放出されており、このガスの採取も行われた。またこの最深部には溶融硫黄のプールが存在し、その温度は155℃であった。昨年度は164℃であった。湖水温度は昨年の10℃から8℃に低下している。また溶存ガス(湖水)のSO_2/H_2S比はやはり昨年度(2.3〜3.2)から低下して0.066〜0.11の範囲となっている。つまりこの火口湖の活動は昨年より低下しているが、この傾向は1990年以降の一般的傾向と一致している。このことは湖水のポリチオン酸濃度変化にも現われており、さらにロシア側から提供された1986年以降の湖水試料および観測記録のつき合わせからも推測される傾向である。湖水の深度方向の重金属(V,Cr,Fe,Ni,Cu,Zn,Pb)の分布はほゞ均一であると言ってよいが、10〜20m付近および湖底でやゝ薄くなる傾向が認められた。1992年の夏の測定ではこの湖における硫黄バクテリアの活動は湖底の噴出孔付近の1点のみで認められたが、1993年夏の測定では湖のほゞ全域で活動が認められた。1993年夏のバクテリア濃度は10^4/ml程度であり、国内の火口湖におけるバクテリア濃度とほゞ同じくらいであることがわかった。湖底の噴出孔からのガスの^3He/^4He比はカリムスキー火山地域とほゞ同様であり、島孤地帯の値としては異常に高いことが明らかとなった。現在試料の分析がほゞ終了しているので、今後全体像、特に火口湖について、を構築してゆく。
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