研究分担者 |
HOUGEN J.T. Natl. Inst. Standards & Technology, Senior Res
川嶋 良章 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (60131009)
大橋 信喜美 金沢大学, 理学部, 教授 (40019493)
HOUGEN Jon t. National Institute of Standards and Technology Senior Research Fellow
J.T Hougen Natl. Inst. Standards & Technology, Senior Res
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配分額 *注記 |
10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
1995年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1994年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1993年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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研究概要 |
1.イオン性結合を有する分子間錯体系の分子構造 (1)MOH(M=Na,K,Rb,Cs) 振動基底状態のみならず、変角振動第2励起状態についても、核四極子結合定数を決定した。またシュタルク効果からNaOHの双極子モーメント6.832(9)Dをえた。 (2)MBH4(M=Li,Na,K) 3種類の分子について、重水素置換体を含む同位体の回転定数を決定し、分子構造を系統的に詳しく検討した。その結果、いずれの分子も、M-B結合距離に対して大きなH/D同位体効果(0.008-0.009A)を示すことが分った.その主な原因はBH4基の内部回転運動によるものと考えられる。さらに、LiBH4のBH4ロッキング振動励起状態の回転スペクトルにみられる異常、すなわち遠心力歪定数の振動励起に伴う大きな変化やΔ1,Δk=(2,-1)相互作用定数rが(2,2)相互作用定数qより大きいことを、BH4基内部回転運動によって説明することに成功した。またNaBH4,KBH4の二つの振動励起状態(M-B伸縮、BH4ロッキング)の間に見られる大きなx,y型コリオリ相互作用をほぼ完全に解析することができた。この解析からえられたエネルギー差は44.3(NaBH4),42.7(KBH4)cm-1である。NaBH4と4のアルカリ金属とボロンの核四極子結合定数を決定した。前者はM-(BH4)結合がイオン的であること、後者はBH4基が正四面体に近い構造をとっていることを支持する結果であった。 (3)LiNaF2 このアルカリハライドヘテロダイマーの回転スペクトルを観測し、分子構造、核四極子結合定数、双極子モーメント[2.64(2)D]を決定した。いずれの分子定数も、結合がほぼ100%イオン的であることを示唆している。 2.分子錯体等における大振幅運動の理論 (1)メタノールダイマー 群論的考察により、K=0の回転準位のエネルギー表現を求め、この結果からK=0-0遷移の帰属を行った。その結果、観測されたスペクトル分裂をトンネル効果に結びつけることができた。さらに理論をK≠0の状態に拡張発展させ、K=1,A状態のスペクトル解析を行うことができた。 (2)Na3 B電子励起状態に期待される擬回転について、そのエネルギー固有値に対する理論的表式を、群論を用いて誘導した。まずポテンシャル障壁の高い場合を取扱い、その結果に基づいてスペクトル解析のための計算機プログラムを作成した。次いで、この理論を低いポテンシャル障壁の場合に拡張し、B-X遷移に対する分光学的観測データを解析することに成功した。 3.その他 (1)グリシン この分子は、生命の起源の問題に関連して、星間空間での検出が待たれている。今回、もっともエネルギーの低い二つの回転異性体について、チッ素の核四極子結合定数及び双極子モーメントを精密に決定した。後者の結果を用いて、二つの異性体間のエネルギー差を705cm-1と求めた。 (2)SiH4・Ar 回転スペクトルの観測に成功した。各回転遷移は2個のK=0(A,F対称性)と3個のK=1(E,F対称性)の成分に分裂して観測された。さらにK=1,F成分には分子内回転による分裂がみられ、この分裂から分子内回転の束縛ポテンシャルを約60cm-1と推定することができた。E状態の遷移のシュタルク効果から、双極子モーメントを0.027Dと決定した。
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