研究課題/領域番号 |
05044051
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松木 征史 京都大学, 化学研究所, 助教授 (50037941)
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研究分担者 |
PINARD J. エミコトン研究所(フランス), 上級研究員
DUONG H.T. エミコトン研究所(フランス), 上級研究員
若杉 昌徳 理化学研究所, サイクロトロン研究室, 研究員 (70250107)
稲村 卓 理化学研究所, 安全整理室, 室長 (30087390)
村山 利幸 東京商船大学, 物理学科, 助教授 (50200308)
薮崎 努 (藪崎 努) 京都大学, 理学部, 教授 (60026127)
藤岡 学 東北大学, サイクロトロンセンター, 教授 (70016111)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
1994年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1993年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | 超微細異常 / 不安定核構造 / 原子ビーム / レーザーマイクロ波共鳴 / 超微細定数 / 核g定数 / レーザー・マイクロ波共鳴 |
研究概要 |
平成6年6月の中旬から7月の下旬にかけて、松木、村山、若杉の3名が各自約2週間づつCERNに滞在し、オンライン実験のための準備と予備テスト実験をおこなった。準備研究で特に行なったことは、アルカリ原子イオンビームの中性化装置の改善である。質量分離装置で分離されたイオンのエネルギーは60keVであり、その高速のまま中性化すると、超微細異常実験装置で3重マイクロ波共鳴を観測するには、その速度が速いために観測時間が短すぎて測定精度が上がらない。このため質量分離装置で分離された60keVのイオンを、イットリューム(Y)がコーティングされたタンタル製の中性化装置に打ち込み、停止させる。打ち込まれたイオンは、表面から再び熱エネルギーを持った状態で放出されるが、Yの効果により、中性の状態でほとんどの原子が放出される。今回、昨年製作した中性化装置の改良版を新たに組み込み、テスト実験として、まず、中性化装置の内部に炭酸セシュームをアルコール中に溶かしたものを塗布して、中性化効率を調べた。測定は中性原子ビームをレーザーにより励起して蛍光を観測することで行なった。さらに、CERNの質量分離装置ISOLDEにより安定セシュームCs原子を分離加速し、中性化装置に打ち込んで、中性化効率を調べた。この結果、装置は十分な効率で中性原子を取り出すのに使えることが確かめられた。このテスト実験で、セシューム原子のレーザー励起蛍光観測の信号対雑音比を上げることも同時に行ない、以前の値よりも1桁以上の改善が得られた。この改善は、光電子増倍管の取り替え、光学系の改良、レーザー光の直線偏光度改善などにより実現されている。また、最終オンライン実験の計測系とそのデータ取得・処理をコンピュータで行なえるようにソフトを整備した。 これらの装置の性能改善を基として、10月には松木、稲村、若杉の3名がCERNに約2週間滞在し、オフラインの装置テストを行ない、さらにオンライン実験の予備実験を実施した。テスト実験の主たる目的は、オンライン実験に必要な最終的な検出感度が得られていることを確認することと、実験全般のプロセスが効率良く実行できるように整備することであった。特に、データ取得のプロセスを遺漏なく進めることと、測定結果の良し悪しを実験中に素早く確認することが出来るように、全系を整備することに主眼を置いた。これらのテスト実験で、幾つかの改善すべき点が見出されたが、大部分は滞在中に解決した。以上のテスト実験の後に、オンラインの予備実験を行なった。残念なことに、実験途中でISOLDE装置のイオン源に故障が発生し、十分な結果を得る前に実験を中止せざるを得ないことになった。 次に、10月に得られた予備的な結果を検討し、またデータ処理系で不十分なところを改善する目的で、平成7年1月に松木がCERNに滞在した。フランスのグループと共同でこれらの改善すべき点について検討し、具体的に処理した。 また、来年度以降の研究方針について、フランス、スエ-デンのグループと打ち合わせを行なった。特に、オンライン実験のビームタイムの時期を何月頃にするかということと、その前に長寿命のセシュームまたはルビジューム不安定原子核について実験を行なおうということで意見を交換し、おおよそのスケジュールを決定した。 以上のように、今年度に予定していたオンライン実験で結果を得ることは種々の外的事情で出来なかったが、多くの改良、改善を装置系について行なうことが出来、従って大幅な検出感度の向上が得られた。現在のところ、ISOLDE質量分離装置はまだ定常状態にはほど遠く、昨年と同様に実験中に故障が発生したのは残念である。しかし、いろいろいな点で、改良が試みられており、次年度はかなり安定なビームが供給できると予想されているので、来年度は長寿命核から比較的短寿命の核まで、超微細異常の実験結果が得られるものと期待している。
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