研究課題/領域番号 |
05044057
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高木 俊夫 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (00029943)
|
研究分担者 |
亀山 啓一 大阪大学, 蛋白質研究所, 助手 (60177607)
佐藤 衛 大阪大学, 蛋白質研究所, 助手 (60170784)
HANESKOG Lar ウプサラ大学, 生物医学研究センター, 助手
HJERTEN Stel ウプサラ大学, 生物医学研究センター, 教授
LUNDAHL Per ウプサラ大学, 生物医学研究センター, 準教授
JANSON JanーC ウプサラ大学, 生物医学研究センター, 教授
相本 三郎 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (80029967)
PER Lundahl ウプサラ大学, 生物医学研究センター, 準教授
|
研究期間 (年度) |
1993 – 1994
|
研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
|
配分額 *注記 |
4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
1994年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1993年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
|
キーワード | スウェーデン / ウプサラ / 科学史 / 分離科学 / 電気泳動 / クロマトグラフィー |
研究概要 |
1.はじめに 生物科学分野の研究において、生体高分子の分離・分析に関する技術は重要な貢献を行ってきている。それらの多くが、独創的なコンセプトに支えられて、スウェーデンのウプサラ大学の研究者によって生み出されてきたことは広く知られている。そこで活躍した研究者群はバイオの分離科学のウプサラ学派と呼ばれている。本研究は同分野に関心を持つ大阪大学蛋白質研究所の研究者とウプサラ学派の間で、広い世代にわたる研究者間の交流を計ることにより、先方の伝統に学ぶとともに、彼らにも当方のバイオ分離科学の研究実績を知って貰う機会を設けることを目的として企画された。本研究の代表者である高木は、過去12年間に、本研究に関連する2回を含めて、12回にわたってウプサラを訪問して同地の多くの研究者と個人的な親交を結び、同地のウプサラ王立科学院の外国人会員に選ばれるなど、ウプサラと大阪の間に太いパイプを作り上げてきた。本研究は、そのような長年の実績を基礎としている。 2.研究者の交流 2年にわたる期間中において、先方からはHjerten,Lundahl,Haneskogの3名が来日し、当方からは高木、相本、佐藤、亀山の4名が先方を訪れた。LundahlとHaneskogは代表者である高木の研究室で、グルコース輸送蛋白質の溶存状態に関しての実験を行ないウプサラ大学では設備の関係で得られないデータを取得し、滞在期間中に多くの日本側研究者と親交を深めた。また、ウプサラ学派の主流の継承者であるHjerten教授には、東京と大阪において我国の電気泳動研究の分野の主要な研究者との間に密接な情報交換の場を提供できた。高木はHjerten教授の研究室に延べ2ヶ月近く滞在し、キャピラリー電気泳動の基礎的実験を行うと共に、後に述べるように科学史研究の観点から同教授について取材活動を展開した。相本、佐藤、亀山は、ウプサラにおいて各々の研究に関連深い人々と討議し、またセミナーを行うことによって交流を深めた。また、本研究の分担者の一人であるJansonは外国人研究員として、半年間当方に滞在して研究に加わった。彼は、我々が行っているオリゴマー・デキストラン溶液を媒体とする新規なキャピラリー電気泳動の開発に加わるとともに、広く各地でウプサラの分離科学研究の成果を紹介する講演活動を行った。これらの人々の年齢は、何れも3世代にわたっており、世代を越えての交流を図るという本研究の当初の目的は十分に達成されたと信じている。 3.ウプサラ学派の歴史的考察 高木は、生物科学分野の分離科学の草分けとなったSvedberg、彼の直系弟子のTiselius、さらに彼の下のPorath,Hjerten,Albertsson,そして一段下のLundahlとつながる研究の系譜の流れを、現存の研究者に関しては、個人的な親交を結んで追跡してきた。本研究においては、特にウプサラにおけるばかりではなく世界的に見ても、電気泳動の開発に中心的役割を果たしたHjertenに注目して、彼の研究の意義について詳細に検討した。彼は、師のTiseliusが開発した移動境界電気泳動から出発して、自由ゾーン電気泳動を自ら開発し、さらにキャピラリー電気泳動の発展においてキーパーソンとして機能した。この間の彼の研究の進展を、同教授の研究室に延べ1ヶ月近く滞在して、親しく会話を交わしながら取材し得たことは極めて貴重な経験であった。得られた成果は、既に一部は公刊した。今日、我国に限らず先進諸国においては、若い研究者が確立された研究法に深く依存し、自らが独自の研究法を開発することに意欲的でないことは多くの識者によって指摘されているところである。物作りに、75才を過ぎても情熱を燃やしているHjerten教授の動静を文書で伝え、また本人と我国において親しく接触できる機会を若い研究者に提供できた。これは本研究の最大の成果の一つであり、今後に長く好影響を残し得ると自負している。 4.総括 今日、国際化がしきりに叫ばれている。本研究も、その線に沿ったものである。しかし、国際化というものは決して容易なものではない。本研究は、最初に述べたように、代表者である高木がウプサラにおいて長年にわたって築いてきた個人的なネットワークを基礎にしている。本研究に科学研究費補助金が得られたことによって、上記の基礎の上に多くの研究者が関わる人的交流の機会を設定することができた。代表者としては、ここで播かれた種がさらに実を結んで、広くは日本とスウェーデンの間の生物科学領域における分離科学に関わる研究者間の交流が、さらにさらに密接になってゆくことを願っている。
|