研究課題/領域番号 |
05044059
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
戸田 芙三夫 愛媛大学, 工学部, 教授 (50036232)
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研究分担者 |
BOURNE Susan ケープタウン大学, 化学科, 主任研究員
CAIRA Mino R ケープタウン大学, 化学科, 助教授
NASSIMBENI L ケープタウン大学, 化学科, 教授
ELGUERO Jose 薬化学研究所(スペイン), 教授
宮本 久一 愛媛大学, 工学部, 助手 (30229893)
田中 耕一 愛媛大学, 工学部, 助教授 (10116949)
NASSIMBENI Luigi r. University of Cape Town, Professor
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
1994年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1993年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | 包接結晶 / ホストーゲスト / 分子認識 / 不斉認識 / X線解析 / 熱力学的測定 / アンモニウム塩 / 光学分割 / 分子集合体 / 選択的反応 / 分子配列制御 / 熱分析 / 平衡凍結 |
研究概要 |
窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環化合物に水素移動に伴う平衡が存在するので、その構造研究は容易で無い。本研究者らは、スペインの研究者との共同研究によってこの問題を新しい手法で解決した。先ず、トリアゾールをホスト化合物と包接させて包接結晶を調整し、そのX線構造解析によって平衡凍結されたトリアゾールの構造研究に成功した。更に、この包接結晶中のトリアゾールのプロトン移動をNMRスペクトルで詳細に研究し、平衡の問題を解明した。更に精密な構造研究を行うため、窒素同位元素(^<15>N)を含むトリアゾールの包接結晶を調整し、その構造研究を行った。この研究によって、トリアゾール環の平衡の問題は完全に解明した。 アスパラギン酸エステルの窒素原子が環内に含まれる、つまり、マロンエステルの炭素原子に窒素原子を含む環状化合物が窒素原子で結合しているキラルな化合物は、血中の水素イオン濃度をNMRで測定する場合に重要な化合物である。このキラルなマロン酸エステル誘導体の調整は極めて困難であるが、本研究者らはスペインの研究者と協力して光学分割法を開発した。上記マロン酸誘導体を、酒石酸から誘導したホスト化合物と包接させると、不斉選択的包接化が起こり光学分割が達成された。この分割の能率は極めて高く、その不斉認識能の原因を追究するため包接結晶のX線構造解析を行った。更に興味深いことに、マロン酸エステルに結合する置換基がモルホリル基の場合には不斉認識が溶媒分子によって微妙に制御された。例えば、トルエン分子が1分子包接されて、ホスト:ゲスト:溶媒分子が1:1:1の包接結晶を形成すると(+)-ゲスト分子が1:1の包接されるが、キシレンは包接されず(-)-ゲストとホスト分子が1:1の包接結晶を形成した。つまり、溶媒分子トルエンが存在すると不斉認識が逆転する。 本研究者らは新しいホスト化合物の設計、合成に努力してきているが、本研究ではベンゼンやナフタレンなどの芳香環にプロパルギルアルコールが数個結合した新しいホスト化合物を合成し、それらの包接挙動を詳細に研究した。最も興味深いホストは、ベンゼン環に6個のプロパルギルアルコールの結合したホストである。このホストは多種多様の包接形態を示した。多くの場合6分子のゲストを包接したが、5個あるいは4個のゲスト分子を包接することもある。6分子のゲストを包接する場合でも、1個のプロパルギルアルコール部分が1個のゲスト分子を包接するという単純な包接挙動ではないことが判明した。その包接挙動はまさに多種多様であり、ゲストによって異なる。その様子はX線構造解析によって明らかにされた。ナフタレン環には最大8個のプロパルギルアルコールが結合可能であるが、6個しか結合しなかった。立体的要因のためペリ位置には結合しないものと考えられる。合成できた2種類の6置換ホスト、1、2、3、5、6、7-置換及び1、2、3、4、6、7-置換ともペリ位置の置換様式を持たない。又、対称性の良い前者がより優れた包接能を示した。この場合も、包接するゲストのモル数はゲストによって異なる。しかし、エチレンに4個のプロパロギルアルコールの置換したホストは例外なく4個のゲスト分子を包接したので、1個のプロパルギルアルコール部分が1分子のゲストを包接するものと考えられる。 この場合にも、キラルなプロパルギルアルコールを置換すると興味深い包接挙動の変化が現れた。例えば、1、2、4、5-位に4個のプロパルギルアルコールが置換したホストには余り優れた包接能が無いが、キラルなプロパルギルアルコールを置換するとその包接能は増大した。キラルなプロパルギルアルコールが置換すると分子の秩序性が増大し、より安定な包接結晶格子を形成し易くなるため包接能が増大するものと考えられる。このことは、ベンゼンに6個のキラルなプロパルギルアルコールが置換したホストについても当てはまる。このホスト分子は合成も容易であり、包接能も高い。これらのキラル多置換ホスト化合物の包接結晶のX線構造解析及び熱力学的測定も南アフリカ連邦の研究者との共同研究で完成している。アンモニウム塩ホストを合成し、これらのホストがフェノール類に対して選択的な包接現象を示し、この現象を利用するとフェノール異性体の分離もできることを明らかにしてきた。
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