研究課題/領域番号 |
05044066
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
薬師 久弥 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (20011695)
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研究分担者 |
LUSHCHIK Ch. Estonian Academy of Sciences, Institute o, 教授
STANKEVICH V Russian Academy of Science, Kurchatov Ins, 施設長
AGRANOVICH V Russian Academy of Science, Institute of, 教授
ZAKHIDOV A.A Uzbekistan Academy of Sciences, Departmen, 室長
加藤 利三 京都大学, 理学部, 教授 (20025282)
鎌田 雅夫 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (60112538)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
1994年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1993年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | フラーレン / C_<60> / 超伝導 / シンクロトロン放射 / 発光 / 銅酸化物超伝導体 / アルカリハライド |
研究概要 |
有機材料に関連した研究成果としては、まずC60を含む新しい三元化合物への展開があげられる。平成5年度に新しい超伝導体Na-C60三元化合物を発見した。これは旧ソ連側代表者のZakhidov博士の研究室との共同研究である。この共同研究に先立って、Zakhidov博士の研究室からKhairullin博士を日本学術振興会外国人特別研究員として一年間招聘した。Khairullin博士を中心としてNaN_3用いてC60に対するド-ピングの実験を行った結果、Naと窒素を含み、15-17Kの転移温度をもつ、新たな超伝導物質を発見した。その後この物質の合成法を確立し、この物質の超伝導特性をSQUIDによる磁化の実験とマイクロ波吸収法(LFS),磁気共鳴(ESR)の実験によって明らかにした。さらにこの物質の構造をX線回析法によって推定し、窒素原子がC60の格子内に取り込まれているらしい事を結論した。従来ナトリウムを含むC60では超伝導体が見出されていなかったが、窒素がNa_3C60におこる不均化相転移を防ぐ事によって超伝導状態を引き起こしている事を明らかにした。平成5年8月に来日したZakhidov博士とこの問題を議論し、三元系の新しい物質へと発展させた。具体的には、京都大学の斎藤軍治教授と共同で、C60と種々の電子供与体との分子錯体にアルカリ金属をドープする事によって、例えばOMTTF-C60など幾つかの分子錯体にカリウムを低温ドープした物質において超伝導現象を観測している。出発物質は単結晶であり、ドープした後も単結晶性を保っているので、構造に関する情報を現在収集している段階である。また大阪大学の吉野勝美教授と共同でポリアルキルチオフェン-C60にアルカリ金属をドープした物質に置いても、超伝導と思われる特異な磁気的挙動を観測した。 一方Stankevichグリープとは平成5年度にTerekhin博士を招聘して、シンクロトンロン放射光励起のC60の発光スペクトルの測定を行い、1.6eVにバンド間発光を見出すなどの実験を行ったが、それを発展させるべく、平成6年度はKolmalov博士を招聘して、BL3A1のアンジュレーター光を励起光として、固体および薄膜のC_<60'>C_<60>F_<48'>C_<70>F_<58>の蛍光のスペクトルおよび寿命測定の実験を行った。その結果、C60の発光はフレンケル型でありながら、構造相転移の影響を受けるなど結晶場の影響を強く受けている事が明らかにされた。一方C_<60>F_<48>やC_<70>F_<58>ではC_<60>とは異なる複雑な緩和過程を示す事が分かった。この事を解明するために京都大学加藤利三教授と共同でエキシマーレーザー励起の発光の実験を行った。また、VUVの光で励起すると光脱離が起こる事を見出し、質量分析器による詳細な実験より、C-F結合の切断が起こっている事を明らかにした。光励起状態の複雑な緩和過程はこのようなC-F結合の解離と関係している事を明らかにしたが、より定量的な理論的解析をLushchik教授等と行うべく広瀬サユミ博士を派遣する。 さらにアグラビノビッチ博士を招聘して、C60およびフタロシアニン導体を始めとする分子性導体の理論的側面について議論を行った。特にフタロシアニン導体におけるπ-d相互作用の理論的側面を明らかにすべく、モデルを組み立てて、平均場理論を拡張する作業を行っている。 無機材料の方は銅酸化超物伝導体と記憶材料としての利用が提案されているアルカリハライドの研究を行った。まずYBa_2Cu_3O_<7-X>とBi_2Sr_2CaCu_2O_<8+X>の良質の単結晶を超高真空下液体ヘリウム温度で壁開した試料を用いて、物質固有の発光スペクトルを観測し、発光過程の模型を提唱した。またBaF_2のオージェフリー発光について新たな消光効果を見出し、その緩和過程に及ぼす影響を明らかにした。CaTaF_3についても発光寿命および励起スペクトルの実験を行った。 以上のような興味ある研究成果の芽をいくつか育てる事ができたと考えている。今後この国際学術研究の援助をバネとして共同研究の成果を更に高めてゆけるものと確信している。
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