研究課題/領域番号 |
05044080
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
幸田 清一郎 東京大学, 工学部, 教授 (10011107)
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研究分担者 |
VARKTESS Ara カリフォルニア大学, アーバイン校, 教授
APKARIAN Varktess ara University of California, Irvine, Professor
APKARIAN Var カリフォルニア大学, アーバイン校, 教授
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
1994年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1993年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | 低温結晶 / クラスター / 光物理過程 / エキシマー / エキサイプレックス / XeS / 酸素原子 / D_2固体 / 緩和 |
研究概要 |
本研究は日本における幸田グループとアメリカ合衆国におけるApkarian教授グループの間の密接な協力の基に低温結晶等に閉じ込められた場における光励起された小分子の物理的、化学的な挙動の理解を格段に進めることを目的としている。特に低温で自立型の希ガスや小分子の結晶を作成し、その中での光物理過程、光化学過程を追跡する方法論を用いているのは、世界的に見て、幸田グループとApkarian教授グループ以外には1、2のグループを数えるのみである。従って、本共同研究の進展は非常に重要な位置づけにある。すでにそれぞれのグループで進展してきた関連研究をベースとして、相互に関心の深い希ガスの酸化物、イオウ化物に関して協力して研究を進展させた。 1.幸田グループにおける研究 幸田らはイオウを含むキセノン結晶について検討を進めた。この研究の意義は、S/希ガス結晶において新規なエキサイプレックス状態を見いだし、その挙動を明らかにすることにある。希ガス酸化物とは異なり、希ガスのイオウ化物のポテンシャルは今までほとんど知られていない。特に希ガス固体中のイオウのイオン的な状態は、その様な状態がSHをドープしたKr結晶の光解離に関係している証拠が示されていはいるものの、ほとんど検討されていない。そこで、幸田らはOCSを含む自立型のXe結晶を作り、これにKrFレーザー光(248nm)を照射することでイオウ原子を生成することを試みた。結晶からの発光を検討したところ、346nmを中心とする新しい発光帯を見いだした。発光の寿命は約180nsであった。この発光に類似した発光がOCSの代わりにCS_2やH_2Sをドープしたときにも見いだされた。しかし中心波長、発光寿命には多少の差異が認められた。346nmを中心とするこれらの発光を、結晶中のXeS電荷移動エキサイプレックスに同定した。結晶の温度を上昇させるとエキサイプレックス発光の強度は減少し、これに対応する形態でS_2(B-X)の発光帯の強度が増加することが認められた。今後さらに、関与しているイオウの電子状態を励起スペクトル測定などの手法で明らかにし、量子化学計算などの結果と比較しつつ光物理過程を明らかにしていく必要がある。 2.Apkarian教授グループにおける研究 Apkarian教授グループではO_2/D_2結晶のArFレーザー照射による酸素原子生成を行い、O/D_2系における分光学、反応過程の研究を進展させた。この研究の意義は、固体のD_2中において励起酸素原子がどのような反応性と拡散性を有するか、酸素原子の光学的な性質は何か、これらの緒特性が量子固体としてのD_2の性質とどのように関係しているかを明らかにすることにある。4Kといる極低温のため、実験的な困難さが大きいが、酸素原子、酸素分子からの発光を見いだしている。原子発光の強度は温度の上昇に対して分子発光に比べて大きく増加した。しかし一度温度を上昇させた後、再度冷却すると原子発光は認められなくなる。これらの実験結果を詳細に検討し、上述の問題点を解明しつつある。 3.研究連絡 研究代表者および研究協力者が短期間、Apkarian教授のグループを訪問し、またApkarian教授のグループの研究協力者が幸田グループを訪問し、研究上の情報交換を行った。XeSエキサイプレックス発光の解釈については、相互に詳細な議論を行って、その同定に関する結論を得るに至った。またO_2/D_2系については、Apkarian教授グループに対して、幸田グループから実験上の貴重な貢献を行った。このようにして、研究内容および実験技術の両面で相互の共同研究が十分機能して、貴重な成果をあげた。
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