研究課題/領域番号 |
05044084
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
清水 勇 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (40016522)
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研究分担者 |
半那 純一 東京工業大学, 工学部, 教授 (00114885)
FORTMANN C. ペンシルバニア州立大学, 電気工学科, 客員教授
WAGNER S. プリンストン大学, 電気工学科, 教授
WRONSKI C. ペンシルバニア州立大学, 電気工学科, 教授
松田 彰久 電子技術総合研究所, 非平衡材料, 室長
HAN-NA J. Tokyo Inst.Tech., Prof.
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1994年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1993年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | a-Si:H / Staebler-Wronski効果 / 化学アニーリング / 荷電欠陥 / 光劣化 / 薄膜 / プラズマ / アモルファス・シリコン / 安定性 / プラズマCVD |
研究概要 |
水素化アモルファル・シリコン(a-Si:H)の高品質・高安定化を目標に、日・米の専門家6名が協力して研究にあたった。日本側では主として製膜過程の解明と新しい製膜技術の開発を担当し、米国側では作製されたa-Si:H薄膜、およびそれを用いたデバイスでの光劣化現象の正確な把握とその原因の解明を目指すよう、それぞれの分担を明かにして協力研究を行った。その結果製膜技術に関しては、グロー放電分解で作製したSiH3を堆積前駆体とする膜堆積時に原子状水素処理を繰り返し行うことにより、バンドギャップ1.55eV--2.1eVの広い範囲で高品質a-Si:H膜を作製できる「化学アニーリング法」を開発し、その構造形成機構が水素による構造緩和促進であることを明かにした。同時に、SiH2Cl2を原料ガスとし、ECR水素プラズマで分解還元してえられた堆積前駆体、SiHnClm(n+m=3),により15A/s程度の高速度で、高品質・高安定a-Si:H薄膜を作製する技術を開発した。この新製膜法で作製したa-Si:H膜は1.8eV程度の比確定wide-gap膜で有り、そのFermi-準位もギャップ中央に位置し、低い電気伝導度、と低欠陥による高い光伝導度をもつ高品質膜である。さらに、長時間の光照射に於ても、欠陥の増加は少なく、光安定性にも優れていることが確かめられた。 また、欠陥濃度が製膜時の表面反応により決定されるとするモデルを提案し、表面反応の動力学制御により反応種自己欠陥制御法(PADS)、反応種励起欠陥低減法(DREP)など高品質薄膜作製のための新規な技術を開発すると共に、プラズマ中のイオン種の制御により高移動度a-Si:H膜作製にも成功した。 一方、米国側研究グループでは、分光エリプソメトリーを用いた膜堆積表面のその場観測結果からは「化学アニーリング法」における水素による構造緩和の事実を立証する結果が得られた。この場合、原子状水素は加熱したフィラメントによる水素分子の分解により作製するため、イオン衝撃などの副次的効果を避け、原子状水素の化学的効果として観察することができた。その結果によると、a-Si:Hに対する原子状水素の効果は、20nm厚程度にまで及び、Si-Si結合の切断を含む水素の網目中への浸透が観察され、その結果、網目構造の緩和を促進することが認められた。 新製膜法として、SiH2Cl2とSiH4の混合ガスから、DCグロー放電分解することにより、基板上の選択的化学反応が促進され、50A/s以上の高速でa-Si:H(Cl)膜が堆積できる方法を開発した。この方法では、SiH2Cl2の分解により生成された塩素を含む堆積前駆体と少量加えた、SiH4が基板上で反応し、HClを放出しシリコン網目構造を形成する。従って、この基板上反応を促進し、高い堆積速度をうるためには、250℃以上に上昇する必要がある。さらに、このような基板上での選択反応を使用することから、高速堆積に於ても、気相中での反応生成物としてのパウダー、フレークなどの望ましからぬ生成物が少ないことも特徴である。加えて、作製された膜の光安定性に顕著な改善が認められ、上述の新製膜法と共に、今後の進展が期待される。 また、a-Si:H薄膜、およびそれを用いたダイオードデバイス(ショットキー、p-i-n構造)にて、Dual Beam Photoconductivity(DBP)測定結果を荷電欠陥の存在を想定したSubgap Absorption Model(SAM)モデルにより解析し、すべての光劣化挙動が矛盾なく説明できる解析方法を提案した。この解析に依ると、well-annealed stateのa-Si:H膜では、中性欠陥に対する荷電欠陥の比,R,は、"intrinsic"ではR=1,"extrinsic"ではR=10程度まで変化する。また、光劣化後には、中性欠陥、荷電欠陥いずれも増加するため、その比R=2程度に収斂する。この解析法の確立により、日・米両国で開発された新製膜法によるa-Si:H薄膜の特性を正しく評価し、比較出来るようになった。
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