火山泥流・洪水・海岸侵食による災害とその防御に関する研究

• 研究課題/領域番号: 05044094
• 研究種目: 国際学術研究
• 配分区分: 補助金
• 応募区分: 共同研究
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 村本 嘉雄 京都大学, 防災研究所, 教授 (50027223)
• 研究分担者: DYAH Rahayu 水資源開発研究所, 河川工学実験所, 所長 ; ISNUGROHO 水資源開発研究所, 河川工学実験所, 研究員 ; SYAMSUDIN 水資源開発研究所, 主任研究員 ; 小林 正美 京都大学, 工学部, 助教授 (50109021) ; AGUS S. 水資源開発研究所, 火山砂防技術センター, 室長 ; 土屋 義人 京都大学, 防災研究所, 教授 (90025883) ; 山下 隆男 京都大学, 防災研究所, 助手 (30111983) ; 江頭 進治 京都大学, 防災研究所, 助教授 (00027286) ; 諏訪 浩 京都大学, 防災研究所, 助教授 (00093253) ; 高橋 保 京都大学, 防災研究所, 教授 (40027230) ; SUKHYAR R. インドネシア火山調査所, 火山解析部長 ; TJETJEP Wimp インドネシア火山調査所, 所長 ; 石原 和弘 京都大学, 防災研究所, 助教授 (30027297) ; 平林 順一 東京工業大学, 草津白根火山観測所, 助教授 (30114888) ; 鍵山 恒臣 東京大学, 地震研究所, 助教授 (50126025) ; 岡田 弘 北海道大学, 理学部, 助教授 (40000872) ; 加茂 幸介 京都大学, 防災研究所, 教授 (70025328) ; DYAH Rahayu Pangesti Dir., Solo River Experimental Station, Res. Inst. for W.R.D.
• 研究期間 (年度): 1993
• 研究課題ステータス: 完了 (1993年度)
• 配分額: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円); 1993年度: 6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
• キーワード: 火山噴火機構 / メラピ型火砕流 / 土石流 / 堆積過程 / 降雨流出 / 河床変動 / 海岸侵食 / 災害仮設住宅

研究概要

1.メラピ火山は16世紀以降50数回の活動を行い、それぞれ10^7m^3の溶岩を噴出し、山頂部に溶岩ドームを形成し、成長を続けている。一方、雲仙普賢岳は1991年5月から12回のドーム噴出活動を繰り返し、約2×10^8m^3の溶岩を噴出した。両火山の溶岩噴出率には相違が見られるが、1サイクルの溶岩噴出量が10^7m^3であること、火砕流の発生様式及び活動初期の爆発的噴火発生などに共通点がある。1992〜93年のメラピ火山の活動に先立ち、3年前から火山性地震の発生頻度の増加と山頂部地盤の膨張が観測され、1年前には低周波地震及び微動の発生頻度が増加した。噴火直前1ヶ月前からは溶岩の噴出に伴う地震が発生し、二酸化硫黄の放出量が増加し溶岩ドームが出現した。溶岩の性質が異なるにもかかわらず、メラピ火山の前駆現象は桜島及び雲仙普賢岳と類似している。メラピ火山の直下の1.5km〜2kmと4km以深では地震が発生しない。同様の特徴が桜島においても認められる。桜島では、2km付近にカルデラの基盤の境界が存在し小規模なマグマ・ポケットが形成し、4km以深にマグマ溜まりが存在することが推定されている。メラピ火山の場合には、1.5km付近にメラピの旧い山体と新しい噴出物の境界があり、そこにマグマ・ポケットが形成されていると考えられる。密度の異なる地層の境界付近で地震活動が低いという両火山の共通点は、島弧火山の構造とマグマ供給システムの解明に新たな知見を与える。
2.ジャワ島のメラピ火山ブブン川において、土石流と河川流の観測および地形変動の調査を行った結果、規模の大きな火砕流発生から10年近くを経過して、メラピ火山では土石流は比較的規模の大きな降雨によってのみ起こり、その度に渓流の下流では土砂濃度がやや低めの土石流が堆積し、河床の上昇が進むようになっていることと、土石流や規模の大きな出水は土砂を大量に輸送するのに加え、攻撃斜面に局所的な侵食を頻繁に引き起こし、側壁のトップリング崩壊など活発な土砂生産の主要な原因となっていることなどを明らかにした。これらの成果、ならびに基礎研究の成果に基づいて火山性土石流の数値シミュレーションモデルを構築し、降雨に伴う土石流の発生・流動・堆積範囲を予測した。これによれば、各支川の河床勾配が2ﾟ〜4ﾟになる領域までは土石流として流出し、これは実態にほぼ一致する。
3.ウリンギーダム(2860km^2)上流域を対象として長、短期の降雨流出モデルを構築し、過去数年間に発生した洪水と水収支を解析した。その結果改良すべき点は残されたものの、降雨流出モデルの妥当性が示された。ついで、47km〜161km区間の河床変動の実態解析を行い、1978年から1989年まで河床低下が進み、この間の低下量は約2千万m^3と推察された。一方、1990年のクル-火山噴火によって一転し、河床は上昇傾向を示していることが判明した。現在、支川からの土砂流入を考慮した河床変動モデルを構築するとともに、洪水に対する河道の弱点部の抽出法について検討している。
4.バリ島サヌ-ル海岸における波浪・海浜流観測を1992年7月から1994年2月まで連続して行ってきた。1992〜1993年の解析結果によれば、乾期(4〜9月)には東よりの貿易風のために長周期(月平均有義波周期9〜12sec)、高波高(月平均の有義波70〜100cm)であるが、雨期(10月〜3月)にはモンスーンにより西風が卓越し、波高は50〜70cm、周期は7.5〜8secとなることがわかった。さらに、これらの成果を参考として、サヌ-ル、クタ及びヌサ・ドゥァ海岸における珊瑚礁背後に形成された砂浜の侵食に関する数値モデルによる検討を行い、その制御法を提案した。
5.インドネシアの供給理念の異なる二つの災害復旧住宅を取り上げその評価を行った。一つはバリ島で地域の伝統的な建設組織・住様式を用いて建設された事例であり、もう一方は、フローレス島で画一的な住宅を大規模な建設組織を用いて建設された事例である。前者は、建設後約20年経過した現在でも使用されているのに対し、校舎は建設後約6ヶ月で既に空き家が目立った。短期間で大量に住宅を供給せねばならない場合でも、各地域の住特性を考慮にいれて住宅は建設されるべきである。

研究成果

• [文献書誌] 加茂幸介: "アナク・クラカタウの1992〜93年の噴火" 火山. 38. 113-114 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 石原和弘: "インドネシアMerapi火山の噴火機構" 京都大学防災研究所年報. 37号B-1(発表予定). (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 諏訪浩: "土石流の観測" 新砂防. 45. 43-51 (1992)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 土屋義人,A.R.Syamsudin,山下隆男: "バリ島の珊瑚礁海岸の侵食制御について" 海岸工学論文集. 40. 466-470 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Dede,M.S.,S.Tsutsui,T.Yamashita,H.Yoshioka,S.Oshiro and Y.Tsuchiya: "Prediction of the maximum wave on the coral flat" Proc.24th Int.Conf.on Coastal Eng.,ASCE. (発表予定). (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Syamsudin,A.R.,Y.Tsuchiya and T.Yamashita: "Beach erosion in Kuta beach in Bali and its stabilization by headlands" Proc.24th Int.Conf.on Coastal Eng.,ASCE. (発表予定). (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 筒井茂明・大城・吉岡洋・山下隆男・土屋義人: "バリ島サタール海岸における珊瑚礁上での波浪の変形" 海岸工学論文集. 41(発表予定). (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Yamashita.T.,A.R.Syamsudin and Y.Tsuchiya: "Wave transformation on coral reef and the most effective wave on beach change of coral-sandy beaches in Bali" Bull.DPRI,Kyoto Univ.44(発表予定). (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Dede,M.S.,A.R.Syamsudin and T.Kurniati: "Karakteristik gelombang Pantai Sanur-Bali" 水資源開発研究所報告. 1-15 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] 小林正美・牧紀男・三浦研: "災害仮設住宅研究 その1-インドネシアの災害復旧住宅の住まい方-" 日本建築学会近畿支部研究報告集 計画系. 34号(発表予定). (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(和文)」より
• [文献書誌] Kosuke KAMO: "The 1992-93 Eruption of ANAK KRAKATAU" Bulletin of the Volcanological Society of Japan. 38. 113-114 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Kazuhiro ISHIHARA et al.: "The Eruption Mechanism of Merapi Volcano, Indonesia" Annuals, Disaster Prevention Research Institute, Kyoto University. 37B-2 (in printing). (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Hiroshi Suwa: "Debris Flows and Mass Wasting in Volcanic Torrents" Hydraulic Engineering '93 (Proc. 1993 Conf. Hydraulic Div. ASCE). 1296-1301 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Tsuchiya,Y., A.R.Syamsudin and T.Yamashita: "Beach erosion control in coral-sandy beaches in Bali" Proc. Coastal Eng., JSCE.40. 466-470 (1993)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Dede,M.S., A.R.Syamsudin and T.Kurniati: "Karakteristik gelombang Pantai Sanur-Bali" Res. Inst. Water Resources Dev. Annuals. 1-15 (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Dede,M.S., S.Tsutsui, T.Yamashita, H.Yoshioka, S.Oshiro and Y.Tsuchiya: "Prediction of the maximum wave on the coral flat" Proc. 24th Int. Conf. on Coastal Eng., ASCE. (in printing). (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Syamsudin.A.R. Y.Tsuchiya and T.Yamashita: "Beach erosion in Kuta beach in Bali and its stabilization by headlands" Proc. 24th Int. Conf. on Coastal Eng., ASCE. (in printing). (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Yamashita,T., A.R.Syamsudin and Y.Tsuchiya: "Wave transformation on coral reef and the most effective wave on beach change of coral-sandy beaches in Bali" Bull. Dis. Prev. Res. Inst., Kyoto Univ.44 (in printing). (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Tsutsui,S., S.Osiro, H.Yoshioka, T.Yamashita and Y.Tsuchiya: "Wave transformation on reef flat of Sanur in beach in Bali" Proc. Coastal Eng., JSCE.41 (in printing). (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より
• [文献書誌] Masami KOBAYASHI, Norio MAKI, Ken MIURA: "A study on the temporary housing system after disaster No.1-The dwelling way of the temporary houses in Indonesia." JA Kinki branch research report. 34 (in printing). (1994)
  • 説明: 「研究成果報告書概要(欧文)」より