研究課題/領域番号 |
05044095
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
左右田 健次 京都大学, 化学研究所, 教授 (30027023)
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研究分担者 |
RINGE Dagmer ブランダイズ大学, 教授
MANNING Jame ロックフェラー大学, 理学部, 教授
趙 洪衍 韓国高麗大学校 自然科学大学, 助教授
成 文喜 韓国科学技術研究所, 高等研究員
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 助手 (70243087)
吉村 徹 京都大学, 化学研究所, 助手 (70182821)
江崎 信芳 京都大学, 化学研究所, 助教授 (50135597)
SUNG Moon-hee Korean Institute of Science and Technology
DAGMER Ringe ブランダイズ大学, 教授
JAMES Mannin ロックフェラー大学, 理学部, 教授
谷沢 克行 大阪大学, 産業科学研究所, 助教授 (20133134)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1994年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1993年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | 好熱性細菌 / 耐熱性酵素 / D-アミノ酸トランスアミナーゼ / ピリドキサルリン酸 / X線結晶解析 / ピリドキサル酵素 / スクリーニング / タンパク質工学 |
研究概要 |
本研究では、まず好熱菌Bacillus sp.YM-1の耐熱性D-アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(DAAT)、及びこれと一次構造上の相同性が高いE.coli由来の分岐鎖L-アミノ酸アミノトランスフェラーゼ(BCAT)の触媒する水素転移反応の立体特異性を検討した。ピリドキサル5'ーリン酸(PLP)を補酵素とするアミノ基転位反応の律速段階である、補酵素のC-4′と基質α-位炭素の間の水素転移反応には立体化学上、3つの可能性が考えられる。すなわちこの転移が、補酵素一基質複合体で形成されるピリジン-イミンπ-電子平面のSi面上またはre面上で立体特異的に起こる場合と、両面上でランダムに起こる場合である。ピリドキサミン5′ーリン酸(PMP)のC-4′のpro-S水素が転移する場合にはピリジン-イミンπ-電子平面のSi面上で、pro-R水素が転移する場合にはre面上で反応が進行する。これまでにアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AspAT)反応など7種のアミノ基転移反応においては、この水素移動がすべてSi面上で進行することが明らかとなっていたが、D型アミノ酸を基質とする本酵素については不分明な状態にあった。この立体特異性決定のため、アポ化した酵素にC-4′位を立体特異的にトリチウム標識した(4′-S)-[4′-^3H]PMPまたは(4′-R)-[4′-^3]PMPを加え、基質ケト酸と反応する際にC-4′位より引き抜かれるトリチウムを測定する方法を開発した。この方法を用いて検討した結果、AspATやオルニチンアミノトランスフェラーゼ(OAT)がSi面上での水素転移を触媒するのに対し、DAAT,BCATは(4′-R)-[4′-^3H]PMPと反応させた場合にのみトリチウムを溶媒中へ放出し、re面上での水素転移を触媒することが明らかとなった。これはre面上での水素転移が報告された初めての例である。アミノトランスフェラーゼは一次構造から(1)AspATグループ、(2)OATグループ、(3)DAAT,BCAT、(4)セリントランスアミナーゼのグループに分類され、このうち(1),(2),(4)のグループとDAAT,BCATのグループは一次構造から別のファミリーに属すると報告された。水素転移反応の立体特異性は、この反応に関わる触媒基が補酵素のどちらの面上に位置するかによって規制されるものであり、これは酵素の立体構造、ひいては分子進化を反映する。明らかとなった水素転移反応の立体特異性は一次構造比較に基づくアミノトランスフェラーゼの分類と合致している。AspATとDATでは補酵素と触媒基の位置関係が逆転していることは、X線解析の結果確かめられた。またDATはAspATを代表とする他のアミノトランスフェラーゼとは全く異なる主鎖フォルディングを示しており、立体構造の上からも他とは異なる分子進化を遂げてきたことが明らかとなった。 本研究ではまた、DAAT活性中心付近の残基の役割について、部位特異的変異法を用いて解析した。まずPLPの結合するリジン145(K145)をアルギニン、アラニン、グルタミン、アスパラギンなどに変換し、これら変異酵素の性質を検討し、K145が基質α-水素の引き抜きを触媒する触媒基である可能性を示した。またre面上でPLPに近接するロイシン201(L201)変異酵素を作成し、これらが反応中に失活していくこと、基質存在下では平衡がPMP型酵素の生成に傾くこと、失活はアミノ基供与体との半反応によって起こることなどを明らかにした。この結果、L201はPMP型酵素からPLP型酵素への転換反応に関わるものと推測された。
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