研究課題/領域番号 |
05044096
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
寺本 明夫 大阪大学, 理学部, 教授 (00028151)
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研究分担者 |
LIFSON Shnei イスラエル, ワイズマン科学研究所, (名誉)教授
PETERSON Nor 米国ポリテクニック大学, 化学科, 教授
GREEN Mark M 米国ポリテクニック大学, 化学科, 教授
佐藤 尚弘 大阪大学, 理学部, 助手 (10196248)
PETERSON Norman C. Polytechnic University
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1993年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 旋光度 / コレステリック液晶 / 水素-重水素同位体効果 / 不斉相互作用 / ポリイソシアナ-ト / らせん形態 / らせん反転 |
研究概要 |
1.希薄溶液中での重水素化光学活性ポリ(ヘキシルイソシアナ-ト)のらせん形態 側鎖であるヘキシル基のα-位あるいはβ-位の炭素に結合している水素原子の一つを重水素で置換し光学活性化したポリ(ヘキシルイソシアナ-ト)(α-PdHIC、及びβ-PdHIC)の希薄溶液中での旋光度を、高分子の分子量と温度の関数として測定した。得られた旋光度は重水素化位置、溶媒、分子量、及び温度に依存し、PdHICの分子形態がこれらの条件によって著しい影響を受けることが示された。 Lifsonらは、ポリイソシアナ-トのモノマー単位が右らせん、左らせん、及びらせん反転という3状態を取るとしたモデルに基づく統計熱力学理論を提出した。同理論による上実験結果のフィッティングより、理論中に含まれるモノマー当りの左右らせんの自由エネルギー差は高々数cal/mol、らせん反転の自由エネルギーは3000cal/mol以上と決定された。前者の小さい値は重水素一原子の置換がモノマーの構造に与える影響が非常に小さいことを示している。これに対して後者の大きい値はらせん反転が起こりにくいことを示しており、その結果小さい左右らせんのエネルギー差が加算されて、高分子全体では左右のらせん数に大きな差を生ずる。このような協同性によって重水素化ポリイソシアナ-トのらせん形態は温度・分子量に強く依存する。 2.液晶中でのポリイソシアナ-トのらせん形態 光学不活性なポリ(ヘキシルイソシアナ-ト)(PHIC)は左右らせんのラセミ混合物として溶液中に存在する。この高分子の濃厚溶液は、ある濃度以上でネマチック液晶を形成するが、これに光学活性な低分子物質、あるいはヘキシルイソシアナ-トとある光学活性なイソシアナ-トのランダム共重合体を少量添加すると系はネマチック液晶からコレステリック液晶に変化した。この変化光学活性物質との不斉な相互作用により、PHICの左右らせんの存在比が1:1からずれたことを示している。 光学活性なイソシアナ-ト共重合体によって誘起されたコレステリックらせんのピッチは、PHICと共重合体の濃度を一定にしておくと、共重合体中の光学活性なイソシアナ-トの組成にはほとんど依存しなかった。この結果は希薄溶液中でのイソシアナ-ト共重合体の旋光度(即ちらせん形態)が共重合体組成に依存する事実と対照的である。液晶中では鎖の折れ曲がりを生じるらせん反転が排除される傾向にあるため、いずれの組成のイソシアナ-ト共重合体も液晶中ではらせん反転を持たない完全らせんの状態にあると考えれば、上述のコレステリックピッチが共重合体組成に依存しない実験事実を説明できる。 3.重水素化シゾフィランの側鎖に関する秩序-無秩序転移挙動 3重らせん多糖であるシゾフィランは水溶液あるいは重水溶液中で側鎖が関係すると考えられるある秩序-無秩序転移を起こす。(この転移に主鎖の3重らせん構造は関係しない。)この秩序状態は重水中の方が軽水中よりも数度高温まで安定であり、顕著な同位体効果を呈する。このことよりこの秩序-無秩序転移には水分子が関係していることが分かる。今回新たにシゾフィラン側鎖のある部位に重水素を導入したところ、やはり秩序状態が数度安定化され、転移曲線は幾分幅広くなった。これはこの秩序-無秩序転移にシゾフィラン側鎖が確かに関与していることを示している。重水素化部位と転移の安定性の関係を更に詳細に調べ、シゾフィランの秩序状態をより明確にすることが今後の課題である。
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