研究課題/領域番号 |
05044118
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
東 正剛 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 教授 (90133777)
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研究分担者 |
WESTーEBERHAN メアリージェ スミソニアン熱帯研究所, 昆虫学部門, 主任研究員
WINDSOR Dona スミソニアン熱帯研究所, 昆虫学部門, 主任研究員
緒方 一夫 九州大学, 熱帯農学研究センター, 助手 (40224092)
松本 忠夫 東京大学, 教養学部, 教授 (90106609)
伊藤 嘉昭 沖縄大学, 短期大学部, 教授 (50115531)
WEST-EBERHAND Mary J. Smithonian Tropical Research Institute, c/o Univers chief Researcher de Costa Ri
WESTーEBERHAR エバーハード メアリー シ スミソニアン熱帯研究所, 生態学部門, 主任研究員
小島 純一 茨城大学, 理学部, 助手 (00192576)
WESTーEBERHAR メアリージェ スミソニアン熱帯研究所, 生態学部門, 主任研究員
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
9,500千円 (直接経費: 9,500千円)
1995年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1994年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
1993年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | 社会性昆虫 / 新熱帯 / 血縁淘汰 / 相利協同 / 多女王制 / カリバチ / アリ / シロアリ / バロ・コロラド / 不妊カースト |
研究概要 |
今回対象とした主な種は、グナンプトゲニス・ホ-ニ、サイフォミルメックス・リモウサス、ミルミコクリプタ・エヅナエラ(以上アリ類)、パラチャルテルグス・スミシイ、パラチャルテルグス・フラテルヌス(以上カリバチ類)、ナスチテルメス・コ-ニガ-(シロアリ)である。 グナンプトゲニス・ホ-ニはしばしば多女王化し、女王は有翅で脱翅するとこれまで考えられていたが、今回の調査で、翅芽を有するものの膜翅のない無翅女王であることが明らかとなった。アリではこれまで胸部の縮小した「ワカ-型無翅女王」は数多く報告されているが、翅芽を有する無翅女王の報告例は極めて少ない。そこでこれらの女王の行動を詳しく観察したところ、典型的な女王の行動を示すものと、ややワーカー的な行動を示すものとに2分され、前者の多くは交尾しているのに対し、後者の多くは未交尾であることが判明したった。さらに、前者はほんど獲物に口をつけず、代わりに盛んに幼虫の体表を舐めることから、血リンパ食の可能性が検討されたが、電子顕微鏡下でも幼虫の体表に傷口や特別な器官は認められず、女王の栄養源が何であるかは不明のままである。また、このアリは頻繁に雌雄モザイク個体を生産し、それらの異常個体の形質はこれまでに報告のある種に比べ、やや雌形質に偏ることも分かった。 ハキリアリ族の系統についてはサイフォミルメックル・リモウサスを最原始種とする説が有力であったが、最近、ミルミコクリプタを最原始属とする説も登場したため、本研究ではその両方の菌園造りを観察した。その結果、ミルミコクリプタ・エヅナエラは枯れ枝の破片などを主な菌園基質とし、菌園造りの行動も他の原始種とあまり変わらないのに対し、サイフォミルメックス・リモウサスの菌園造りはかなり特殊であった。特に、菌園基質として植物の材片や糞よりも口から吐き戻すゼリーを多く使っており、実際このアリはこれまで考えられていた異状に頻繁に樹上などで密や樹液を採取し、巣に運び込んでいることが明らかとなった。また、これまで成虫も菌を主な餌としていると考えられていたのに対し、菌糸は主に幼虫の餌であり、成虫の多くは巣外で集められる蜜や樹液から栄養を取っていることも判明した。これらの観察結果は、フタフシアリ亜科に一般的な口移しによる栄養交換からどのようにして菌食が進化してきたかを考察する上で非常に重要な知見と考えられる。 カリバチの多くは女王による独立創設によって新しいコロニーを造るが、分封(巣分かれ)によって創設する種もいくつか報告されている。今回観察したパラチヤルテルグス属のスミシイとフラテルヌスも明らかに分封を行ったが、その行動はいままでに報告のある分封創設型の種とは多少異なるものであった。特に、巣の外皮は巣盤がかなり完成してから造られるのが一般的であるのに対し、これらのカリバチではかなり速い段階で外皮が造られており、分封型の進化を考える上でかなり重要な知見と思われる。 多くのシロアリは単女王制であるのに対し、南米からはいくつかの多女王性種が報告されており、ナスチテルメス・コ-ニガ-もその1つである。しかし、この種の多女王化がどのように生じるのかは不明であったが、今回の調査により新生生殖虫の居残りによって多女王化することがほぼ明らかとなった。しかも、DNAフィンガープリント法による血縁分析の結果は、これらの生殖虫の多くが姉妹の関係にある可能性の高いことを強く示唆している。 これらの成果をふまえ、10月下旬には本研究の総括を行い、少なくともアリとシロアリの多女王制はハミルトンの血縁選択説を強く支持するのに対し、カリバチの多女王制では相利協同もかなり重要な役割を果たしている可能性の高いことが議論された。
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