研究課題/領域番号 |
05044121
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
岡村 直道 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (30134224)
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研究分担者 |
HARRISON RA. AFRC, 動物正理学・遺伝学研究所(英), 主任科学職員
DACHEUX J.L. CNRS, 国立農学研究所(フランス), 主任研究官
永井 卓 農水省, 東北農試・家畜繁殖研究室, 室長
HARRISON Robin a.p. Agricultural & Food Research Council (UK)
DACHEUX Jean-louis INRA/CNRS (France)
HARRISON RAP AFRC, 動物生理学・遺伝学研究所 (英国), 主任科学職員
DACHEUX JL CNRS, 国立農学研究所 (フランス), 主任研究官
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
1994年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1993年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
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キーワード | 精子成熟 / 精巣上体 / グルタチオンペルオキジダーゼ / カルシウム / 先体反応 / 受精能獲得 / 運動能 / 受精能 / Capacitation / フォルスコリン / 重炭酸イオン |
研究概要 |
本研究は、精巣で作られた精子が、どのようなメカニズムで受精能を獲得するかという問題を、特に精子と体細胞との相互作用に着目して、分子レベルで解明することを目的として行われた。研究は、主に二つに大別され、岡村とDacheuxは、精巣上体における精子成熟に関与する精巣上体上皮細胞からの分泌蛋白質の解析を行った。一方、永井、Harrisonと岡村は、豚の体外受精系を用いて、精子の受精率に影響する因子の解析を行った。以下にその結果を示す。 1、精巣上体における精子成熟機構の解析 精巣で形成された精子は、精巣上体の長い細菅を通過する過程で初めて、前進運動をし、卵に受精する能力を獲得する。精巣上体の頭部から尾部へ精子が移動していくことが精子成熟に必要であるならば、精巣上体の特定の部分で分泌するタンパク質が、精子成熟の重要な調節因子として働いているものと推測し、昨年度は、精巣上体体部から分泌する135kDaタンパク質の解析を行った。本年は、新たに、精巣上体頭部の後半から分泌される23kDaタンパク質に着目した。先ずブタの精巣上体尾部分泌液から、このタンパク質を精製すると共に、そのN-末端アミノ酸配列を決定し、それをもとにcDNAをクローニングした。cDNAから予想された全アミノ酸配列から,23kDaタンパク質が、精巣上体に特異的なグルタチオンペルオキシダーゼであることが判明した。しかし、活性型のグルタチオンペルオキシダーゼが、活性中心にセレノシンテインを持っているのに対し、23kDaタンパク質では、システインに置き変わっていることが分かった。実際に酵素としての活性を殆ど持たないことが明かとなった。一方、免疫組織化学的手法を用いて、精子への23kDaタンパク質の作用を調べたところ、成熟精子の先体の表層へ、特異的に結合していることが判明した。更に、先体反応と共に、消失することも明らかになった。以上の結果から,23kDaタンパク質は、精巣上体頭部で特異的に合成、分泌され、精巣から運ばれてきた精子の先体表層に結合して、なんらかの形で先体反応に関与していること、言い換えると、精子の受精能に関わっていることが予想された。 さて、精巣上体は、精子の成熟を助ける一方で、精子を酸化的傷害から保護していると考えられている。精子において酸化的傷害をおこす主因は過酸化脂質であるとされ、これが増加すると、膜の透過性の増大、運動性低下などをきたし、受精能の低下に結び付くことが報告されている。他方、ホスホリパーゼA2を活性化して先体反応を誘起することも知られている。仮説ではあるが、精巣上体中で精製した精子表層の過酸化脂質に23kDaタンパク質が結合して、マスクしてしまうことによって、精子を傷害から守ったり、早すぎる先体反応を抑える役割を果たしていることが考えられる。何れにしても、23kDaタンパク質の発現量は、精巣上体頭部の機能を判定するよいマーカーである、また、その抗体は、精子が先体反応を起こしているか否かを判定する新しいプローブとして利用できる。 2、精子の受精能に影響する因子の解析 精子の受精能獲得は、精子が発情時の雌性生殖器道を通過する際に、アルブミンやリポタンパク質などによって、精子細胞膜内のコレステロールガ取り除かれ、細胞膜の流動化が起こることによって引き金が引かれる。その後、精子内へのカルシウムの流入が起こり、透明帯への付着、先体反応を経て、初めて卵子へ侵入可能となる。我々は、精子内のカルシウム濃度を高めることによって、精子先体反応を高め、結果として受精能を増大されることができることを明らかにした。すなわち、カゼインホスホペプチドは、培養液中のカルシウムの沈殿を防ぐことにより、また、ホルスコリンは、直接精子内にカルシウムを流入させることによって、精子内のカルシウムレベルを高め、受精能を上げることを明らかにした。一方可溶化した透明帯は、ブタ精子の先体反応の誘起効果が低く、透明帯そのものの構造が、精子の先体反応の誘起に必須であることをつきとめた。
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