研究課題/領域番号 |
05044131
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
後藤 祐児 大阪大学, 理学部, 助教授 (40153770)
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研究分担者 |
河田 康志 鳥取大学, 工学部, 助教授 (40177697)
片岡 幹雄 大阪大学, 理学部, 助教授 (30150254)
小西 康夫 カナダ国立バイオテクノロジー研究所, 部門長
FINK A.L. カリフォルニア大学, 化学生化学部, 教授
DILL Ken A. カリフォルニア大学, 薬学部, 教授
倉光 成紀 大阪大学, 理学部, 教授 (60153368)
DILL Ken A カリフォルニア大学, 薬学部, 教授
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1994年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1993年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 蛋白質 / 静電的相互作用 / 疎水的相互作用 / X線溶液散乱 / 質量分析 / モルテン・グロビュール / 分子シャペロン / 蛋白質の構造形成 / タンパク質 / マススペクトル / 熱ショック蛋白質 / タンパク質の構造形成 |
研究概要 |
モルテン・グロビュール状態はコンパクトで多くの特異的な二次構造を含むが、三次構造的には大きく崩れた中間的な構造状態である。同状態は、単にタンパク質の構造と物性という観点にとどまらず、細胞内での蛋白質の構造形成反応や膜透過とも関連して注目されている。本共同研究の目的は、「モルテン・グロビュール状態の構造と安定性の機構を実験と理論の両面から調べ、蛋白質の立体構造形成反応の普遍的原理を解明すること」である。さらに「モルテン・グロビュール状態の生理的役割を明らかにすること」も目標とした。モルテン・グロビュール状態に焦点を当てて、海外の研究者を含めた総合的な共同研究を行なうことにより、以下の成果を得た。 1.モルテン・グロビュール状態の構造と安定性の分子機構、およびその理論的解析 (1)構造 片岡は、X線溶液散乱により、アポミオグロビンのモルテン・グロビュール状態を含むさまざまな構造状態を調べ、これらの慣性半径、球状性の程度、距離分布関数、二次構造要素の相関に基づく内部構造などを明らかにした。その結果、アポミオグロビンのモルテン・グロビュール状態は、ネイティブ状態よりは膨潤しているが、酸変性状態よりは明らかにコンパクトであることを示した。そして、モルテン・グロビュール状態は、コア構造とアンフォールディングした領域から形成されること、コア構造内の二次構造配置はかなり固定されていることを示した。他方、Dillは、統計力学的理論と格子モデルを用いて中間的構造の特徴を予測した。実験結果は、モデルから予測されたものとよく一致した。そこで、X線溶液散乱から得られたモルテン・グロビュール状態の特徴は、タンパク質の中間体の構造を考える上で、普遍的な重要性をもつと考えられる。 (2)安定性 後藤は、アポミオグロビンやシトクロムcのモルテン・グロビュール状態の安定化における静電的相互作用や疎水的相互作用の役割を、示差走査熱量計や滴定型熱量計を用いた熱測定、円二色性スペクトルなどによって調べた。その結果、静電的反発力が同状態を大きく不安定化することを示した。また、同状態の安定化には、ネイティブ状態と比較して約20-30%程度の疎水的相互作用が作用していることを示した。 (3)構造形成のプロフィール X線溶液散乱や円二色性スペクトルより得られた構造情報、熱測定より得られた物性情報を総合して、アポミオグロビンとシトクロムcの構造形成反応のプロフィールを示した。その結果、高度にアンフォールディングした状態からスタートして、分子がコンパクトになるにつれ二次構造が形成されるが、疎水的相互作用は、フォールディングの最終段階で獲得されることを明らかにした。このようなプロフィールは、Dillが行った統計力学的モデルで予想されるものと一致した。 2.分子シャペロンの作用機構の解析 河田らは、大腸菌の分子シャペロンGroEの作用機構を解析を行った。蛍光標識したアポシトクロムcがGroEと特異的に相互作用することを、ゲルろ過法を用いて示した。蛍光ストップトフロー装置を用いて相互作用の速度を測定し、それが0.1秒以内に終了する速い反応であることを示した。これらの実験により、GroEは、標的蛋白質の表面に露出した疎水的クラスターを認識していることが明らかになった。また、GroEが標的蛋白質と相互作用するか否かは、標的蛋白質のフォールディング速度に依存していることが示唆された。他方、Finkらは、大腸菌の分子シャペロンDnaKの作用機構を解析した。GroEの場合とは対照的に、DnaKは、基質蛋白質のかなりアンフォールディングした状態を認識していることを示した。 3.質量分析による解析 小西らは、質量分析法を用いてモルテン・グロビュール状態を解析することを試みた。シトクロムcやβ-ラクトグロブリンのさまざまな構造状態を用いて、重水素交換実験を行い、質量分析法がモルテン・グロビュールの動的構造の研究に有効であることを示した。今後、更に発展させて行く予定である。
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