研究課題/領域番号 |
05044138
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
浅野 泰久 富山県立大学, 工学部, 助教授 (00222589)
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研究分担者 |
山田 秀明 富山県立大学, 工学部, 教授 (30027180)
加藤 康夫 富山県立大学, 工学部, 助手 (20254237)
クーパー アーサー.J. 米国コーネル大学, 医学部, 教授
COOPER Arthur j.l. Professor, Cornell University Medical College
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1994年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1993年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | Amino Acid / Immunotitration / Amino Acid Dehydrogenase / Primary Structure / Enzyme Purification / Phenylalanine Dehydrogenase / Screening / Sequence Homology |
研究概要 |
近年、生体触媒である酵素が示す優れた特性を光学活性物質の合成や微量定量に利用しようとする研究が世界的規模で開始されている。本申請者らは、Bacillus属およびSporosarcina属細菌がフェニルアラニン脱水素酵素を生産することを世界に先駆けて見いだした。これらの酵素をアメリカ合衆国コ-ネル大学医学部ク-パ-教授に分与することから一連の共同研究が開始された。この二年間の共同研究で得た研究結果は次のとおりである。 (1)細菌Bacillus shaericus,B.badius,Sporosarcina ureae由来のフェニルアラニン脱水素酵素の酵素化学的特性および基質特異性を合成基質を用いて詳細に調べた。従来の化学合成法や光学分割法の問題点を回避すべく、プロキラルなα-ケト酸を原料として多種類の光学活性L-アミノ酸の立体選択的合成を行った。本酵素と酵母Candidaの蟻酸脱水素酵素を組み合わせて用いると、L-アミノ酸を収率よく合成することができる。本酵素は、フェニルピルビン酸のみではなく、他のα-ケト酸の還元的アミノ化にも利用でき、天然型、非天然型を問わず、L-アミノ酸の立体特異的合成、さらに、^<13>Nで標識したL-アミノ酸の合成が可能になった。特に、医薬原料であるL-ホモフェニルアラニンをも効率良く合成することが可能になった。 (2)ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(PET)は、極めて短い半減期の陽電子放出核種で標識化した化合物を、体内に投与してイメージングを行うものである。本酵素を用いることにより、半減期の極めて短い^<13>Nを用いて容易に標識化芳香族L-アミノ酸を合成することができた。すなわち、^<13>Nで標識化されたアンモニウムイオンとα-ケト酸を基質とし、固定化した本酵素を用いて還元的アミノ化反応を行い、^<13>N標識化したL-フェニルアラニン、L-チロシン、およびL-DOPAを得た。 (3)遺伝子工学的研究により、これらの数種類の酵素タンパク質のアミノ酸配列および塩基配列を明かにした。本研究により、本酵素が、ロイシン脱水素酵素、放線菌由来の耐熱性フェニルアラニン脱水素酵素、およびグルタミン酸脱水素酵素と類似性を示すことが明らかになった。 (4)乳幼児のマススクリーニングにおいて、フェニルケトン尿症は重要な臨床検査の項目となっている。本酵素を体液中のL-フェニルアラニンの微量定量の素子として用いる方法が開発され、従来の微生物法による検査法を置き換えつつある。また、フェニルピルビン酸の定量にも有効に利用できた。 (5)コ-ネル大学グループが有するグルタミントランスアミナーゼK遺伝子およびフェニルアラニンアラニン脱水素酵素は共通の基質を利用する。また、各種の脱水素酵素の間で阻害剤も共通する可能性がある。そこで、非天然型のα-ケト酸を新規合成し、α-ケト酸を基質とする各種酵素に対する挙動について検討を加えた。不飽和結合を有するα-ケト酸である、1-シクロヘキセンピルビン酸合成法の開発途中に得られたスピロラクトン体である、3-ヒドロキシ-2-オキソ-1-オキサスピロ[4.5]-デセ-3-エンが乳酸脱水素酵素(LDH)の強力な阻害剤として作用することを見いだした。LDHに特異的な阻害剤は、虚血性心疾患の研究において血流停止中の脳内のpH低下を防ぐ目的で、大いにその開発が期待されている物質である。種々検討の結果、同化合物は0.32mMの阻害定数をもってLDHのNADH結合部位に作用し、拮抗的に阻害した。同化合物はLDHに対して特異的に作用し、他のα-ケト酸を基質とする各種の酵素に対しては全く阻害効果を及ぼさなかったことから、本酵素の特異的阻害剤開発のテンプレートとして期待がもたれる。
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