研究課題/領域番号 |
05044146
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柴原 茂樹 東北大学, 医学部, 教授 (70206142)
|
研究分担者 |
佐々 茂 ロックフェラー大学, 准教授
山本 雅之 東北大学, 医学部, 講師 (50166823)
HARTMUT Beug オーストリア, 分子病理学研究所, 教授
藤田 博美 東北大学, 医学部, 助教授 (60142931)
近藤 雅雄 国立公衆衛生院, 栄養生化学部, 主任研究官 (80111110)
|
研究期間 (年度) |
1993 – 1994
|
研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
|
配分額 *注記 |
7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
1994年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1993年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
|
キーワード | ポルフィリン症 / ヘム代謝調節 / 先天異常 / 鉄芽球性貧血 / コプロポルフィリノーゲンオキシダーゼ / ウロポルフィリノーゲンデカルボキシラーゼ / δ-アミノレブリン酸脱水酵素 / δ-アミノレブリン酸合成酵素 / ヘム代謝 |
研究概要 |
1. 先天性ヘム代謝異常の分子生物学的解析:(1)遺伝性コプロポルフィリン症(HCP)の解析-HCP患者のコプロポルフィリノーゲンオキシダーゼの一方の対立遺伝ではGly^<172>がHisへと置換しており、もう一方の対立遺伝子ではGly^<89>SerへVal^<194>がIleへと置換していいた。患者の二人の姉妹の一方からは後者のアミノ酸置換が検出された。これらの3種類の置換をもつ3種類のcDNAの発現実験を行なった所、His^<172>が存在する場合のみ活性が全くないことが判明した。Gly^<172>は大腸菌からヒトの本酵素まで保存されており、蛋白質の構造上重要な役割を担っていると考えられる(Hum.Mol.Genet.(1994)3:1807-1810)。 (2)肝性骨髄性ポルフィリン症(HEP)の解析-HEP患者のウロポルフィリノーゲンデカルボキシラーゼの一方の対立遺伝子からはT^<417>G^<418>T^<419>からCCAへという突然変異が、他方の対立遺伝子からはA^<677>からCへと突然変異が検出された。発現実験の結果、前者を有するcDNAからは80%の活性をもつ酵素が、後者においては40%の活性をもつ酵素が転写・翻訳されることが示された(J.Inbest.Dermatol.(1994)93:128-134)。 (3)これらのほか、遺伝性鉄芽球性貧血・異型性ポルフィリン症・δ-アミノレブリン酸脱水酵素欠損による肝性ポルフィリン症のそれぞれの遺伝子異常の解析を進めており、既にいくつかの異常の存在を突き止めている。 2. ヘム代謝調節機構の研究:上記の研究と平行して、先天性ヘム代謝異常症の発症に関連すると考えられるヘム代謝調節に関する基礎的な研究を行なっている。例えばヘム合成系の終末酵素であるフェロキラターゼ(FeC)mRNAの寿命は十分なヘムが供給されないときに著明に短縮しており、このことがFeCの先天異常である骨髄性プロトポルフィリン症の発症あるいは遺伝性鉄芽球性貧血時のFeC活性の低下に関与していると考えられる(Brit.J.Haematol.(1993)83;485-490;ibid(1993)84:670-675;J.Bioenerg.Biomembr.(1995)in press)。 また、今まで明らかではなかった赤血球系におけるヘム代謝調節が、ヘム代謝異常に及ぼす影響を明らかにするために、赤血球系転写因子とヘム代謝調節の関係を解析することにした。その結果、代表的な赤血球系転写因子の一つであるGATA-1が精巣で精巣特異的なプロモーターを利用して発現していることを明らかにした(Nature(1993)362:466-468)。さらに、他の赤血球系転写因子であるNF-E2には従来知られている大サブユニット(p45)の他に小サブユニット(p18)が必要であることを示した(Nature(1994)367:568-572)。そのうえ、赤血球型δ-アミノレブリン酸合成酵素(ALAS-E)を欠損した赤血球系細胞株でヘムの供給が減少するばかりでなく(Blood(1994)83:1662-1667)、NF-E2の大サブユニットの発現が抑制されることを明らかにした。ALAS-Eの先天性の異常により遺伝性鉄芽球性貧血が発症する事が知られているので、今回の発見はその病態にNF-E2が関与することを示唆しており非常に興味深い。 さらに我々は、赤血球ともっとも近縁の細胞である巨核球におけるヘム代謝あるいは、巨核球分化と赤血球分化における赤血球系転写因子の役割等を明らかにするために巨核球系細胞UT-7の巨核球への分化過程・赤血球への分化過程の解析を進めている(Cancer Res.(1993)53:1156-1161;Blood(1993)82:456-464)。今後、ヘム代謝異常の機構を単に突然変異のレベルからだけではなく代謝調節という面から明らかにして行くうえでこれらの研究成果は重要な意味をもってくると考えられる。
|