研究課題/領域番号 |
05044152
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
平川 公義 東京医科歯科大学, 医学部, 教授 (00010166)
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研究分担者 |
RAPOPORT Sta 米国国立衛生研究所, 神経科学部門, 主任
成相 直 東京医科歯科大学, 医学部, 助手 (00228090)
RAPOPORT Stanley i. Laboratory of neurosciences, NIA,NIH,USA,Chief
STANLEY I. R 米国国立衛生研究所, 神経科学部門, 主任
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1994年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1993年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | 脂肪酸 / リン脂質 / PET / ポジトロンCT / パルミチン酸 / アラキドン酸 / ドコサヘキサエノエン酸 / オートラジオグラム / 燐脂質 / 脳代謝 / サイクロトロン / ホスホリパーゼ |
研究概要 |
今回のわれわれの共同研究の主目的は、生体の細胞膜構成成分として重要な役割を持つ燐脂質の、主として脳神経系における働きを人体に投与可能のポジトロン標識脂肪酸により画像化することであった。特にアラキドン酸、ドコサヘキサエノエン酸といった長鎖不飽和脂肪酸が、神経系での情報伝達や細胞障害の発現への関与などに重要であるが、本研究の開始にあたり平川、成相らはわが国に於いて11C標識ドコサヘキサエノエン酸を合成し小動物による実験で脳イメージングに使用可能であることを示す段階にいたり、また米国国立衛生研究所(NIH)においてはDr.Rapoportらは11C標識パルミチン酸、11C標識アラキドン酸の合成とその大型動物(サル)においての実験を開始した。このNIHにおけるプロジェクトでは今回の研究代表あるいは分担者が本研究を通して参加する以外に、東京医科歯科大学からのNIHへの派遣研究員である若林伸一、新井俊成(いずれも現在東京医科歯科大学助手)が参加しており共同研究下にデーターの解析を行った。 主たる活動は、この研究期間の内に共同でヒト脳のポジトロンCT(PET)における画像化を達成することにあり、そのためそれを補助する基礎データーの収集に多くの時間を充てた。すなわち正常人とともに、これまでの基礎実験から有用な臨床利用ができる対象疾患として脳腫瘍、アルツハイマー病、Nieman-Pick type C患者をあげ、NIH倫理委員会にプロトコールを申請した。それとともに各種神経疾患への脂肪酸脳イメージングの応用の可能性を示すため、ラット眼球摘出によるdenervation model、頭部外傷動物モデル、急性期脳虚血モデル、kindlingによるてんかんモデルでの基礎実験を行った。これら動物に放射標識脂肪酸を投与しオートラジオグラムを作成し脳局所への脂肪酸取り込みデーターを解析し、従来行われてきたdeoxyglucose,iodoantipyrinオートラジオグラムによるブドウ糖代謝、血流計測を同時に組み合わせ行ない、神経細胞障害に関わる病的脂質代謝変化を画像化することの有用性とその意義に関して基礎実験を進めた。 得られた結果は以下の通りである。 臨床PETに向けての段階としては、1)C11標識脂肪酸を静脈内に投与することでPETを用い脳の形態を描出するに充分な脂肪酸の脳への取り込みが見られた。2)C11標識不飽和脂肪酸は体内でβ酸化を受けにくいので、脳への取り込みはおおむね燐脂質代謝を反映するといって良い。しかし飽和脂肪酸(パルミチン酸)を用いる場合は、β酸化による代謝産物発生のため脂質代謝を十分に反映しないため脂肪酸のβ酸化の抑制のためmethyl palmoxirateを同時投与する必要がある。3)methyl palmoxirateの臨床検査薬剤としての認可が遅れたため研究年度内にヒトにおけるPET研究を開始するこができなかった。ただしその他の点はすでにクリア-しているので、次年度早々には認可が得られる見通しができている。 小動物における基礎実験では、1)denervation急性期、慢性期において、糖代謝では捉えられない神経可塑性変化が脂肪酸オートラジオグラムにて得られた。2)神経外傷モデルでは、血流、糖代謝の結果を解析する段階までで、脂肪酸オートラジオグラムによる分析は次年度に行うこととなる。3)急性期脳虚血モデルにて、血流、糖代謝減少期に不飽和脂肪酸取り込みの増加が見られた。意義に関し検証中であるが虚血急性期のphospholipase A2の活性化に関連があるのではないかと考察している。4)kindlingによる発作後に脂肪酸取り込みの変化が主として辺縁系に認められることが示唆された。詳細なデーターの解析は現在も継続して行っている。 以上のように、PETを用いた脂肪酸による脳神経系イメージングはおおむね目標に近づきつつも本研究年度には臨床使用の段階に至らなかった。ただし、次年度には確実に臨床応用が開始されるので今後も共同研究体制を継続し、基礎及び臨床データーの解析を行う計画である。
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