研究分担者 |
榊原 順 新潟大学, 医学部, 助手 (90242403)
藤井 博 新潟大学, 医学部, 助教授 (90165340)
井関 尚一 金沢大学, 医学部, 教授 (50167251)
鈴木 利光 福島県立医科大学, 教授 (80018952)
近藤 尚武 東北大学, 医学部, 教授 (20004723)
STORCH Judit Rutgers大学, 栄養学部, 助教授
JUDITH Storc Rutgers大学, 栄養学部, 助教授
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研究概要 |
Storchらは蛍光標識脂肪酸アナログを用い人工的なリポソームへのFABP結合脂肪酸の転送機構についてエネルギートランスファーアッセイと呼ばれるユニークな測定法を開発し、脂肪酸トランスファーに関する詳細な解析を行ない、肝型のFABPではFABPからの脂肪酸の解離が律速となっているのに対し、心筋型では膜との衝突により迅速に転送されることを明らかにした。(J.B.C.,269,10517-10523,1994)彼らは更に心筋型、脂肪細胞型FABPのアミノ酸置換蛋白を数種合成しそれらのFABPを用いたエネルギートランスファーアッセイで解析、FABPの特定の塩基性アミノ酸が衝突理論に重要な役割を演じることを、従って膜にFABPのリセプターが存在する可能性を示唆している。(J.B.C.,in press,1995) 小野、藤井、榊原らはネズミの皮膚からシスチンを5個含む極めて珍しいタイプの分子量15.1kDaの細胞内脂肪酸結合蛋白(FABP)を精製、脂肪酸に対する結合能を明らかにするとともに、cDNAを単離して蛋白のアミノ酸配列、cDNAの塩基配列よりその一次構造を決定した。その結果この蛋白が既に一次構造が決定されている末梢神経ミエリン鞘から単離されたミエリンP2蛋白、脂肪細胞由来の脂肪酸結合蛋白、心筋由来の脂肪酸結合蛋白とほぼ50%のホモロジーを有することが明らかにでき、FABPファミリーの新しいメンバーであることを報告した。(B.B.R.C.,200,253-259,1994)これまで知られているFABPファミリーの中でシスチンを2個以上持つものは知られておらず、極めて興味深い。また皮膚cDNAをE.coliで発現させたリコンビナント蛋白は脂肪酸結合能を持たず、シスチンは分子内ジスルフィドを形成していていることが示唆され、皮膚から精製した蛋白の一次構造解析からCys^<67>-Cys^<88>及びCys^<120>-Cys^<127>の間で分子内ジスルフィド結合の存在が確認され脂肪酸の結合に重要な役割を果していると推定される。Storch博士らも確認している心筋型、脂肪細胞型、ミエリン鞘型脳型等のFABPでX線解析上脂肪酸のカルボキシル基と静電気的相互作用を持つとされるR^<109>は皮膚型でも保存されており、結合様式は直交するβ-バレルが基本構造と考えられ、脂肪酸結合における分子内ジスルフィドの役割解明が今後の課題である。 我々の見出した皮膚型FABPがエネルギートランスファーアッセイでどの様な脂肪酸転送機構を示すか目下Storchのグループと共同研究中であるが、結論までに至っていない。 小野、藤井らは心筋型のFABPが比較的広範囲に組織分布するが、大動脈の内皮細胞並びに平滑筋にも発現していることを明らかにした。更に実験的糖尿病ラット(ストレプトゾトシン投与)で大動脈の心筋型FABPの発現が転写レベルで抑制されるが、心筋では抑制されず、インスリン投与により大動脈での心筋型FABPの発現が転写レベルで回復することを明らかにした。(Eur.J.Biochem.632,in press,1995)このことは心筋型FABPの発現が組織により発現調節が異なっていることを示唆しており、大動脈の心筋型FABPのプロモーター領域にインスリン感受性エレメントの存在を想定させ、今後の解析課題と考えられる。また糖尿病の血管性病変で、増加する遊離脂肪酸の細胞内処理でのFABPの役割の重要性を強く示唆される。 小野は腸組織に特異的に発現している腸型FABPが腸疾患時の血管への逸脱マーカーとなる可能性を追及し、明らかに腸の虚血性疾患時のマーカーとして最適であることを確認した。(Gut,468,in press,1995)更に臨床症例を増加させてGastroenterologyに投稿中である。 井関、藤井、小野らはラット卵巣での心筋型FABP並びにI-15Pの発現を発生学的に検索しゴナドトロピンによる調節を示唆した。(Anat.Rec.,24,235-243,1995)近藤らは脳でのFABPの役割を燐脂質機能面から捕らえる予備実験としてホスフォリパーゼA_2の脳での発現調節(Mol.Brain Res.,25,364-368,1994)並びにジアシルグリセロールキナーゼの特異的なアイソフォームの小脳での動態を報告した。(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,91,13042-13046,1994) 鈴木、藤井、小野らはヒトの腸組織における肝型FABPのサブタイプの1つであるI-15Pの組織分布に関し詳細な報告を行なった。(Arch.Histol.Cytol.,in press,1995)
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