研究課題/領域番号 |
05044155
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 富山医科薬科大学 |
研究代表者 |
竹口 紀晃 富山医科薬科大学, 薬学部, 教授 (00019126)
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研究分担者 |
DIENER Marti チュウリッヒ大学, 獣医研究所, 助手
酒井 秀紀 富山医科薬科大学, 薬学部, 助手 (60242509)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1993年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
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キーワード | イオンチャネル / 解毒ポンプ / 下痢 / 腸 / 肝 |
研究概要 |
本研究課題の追求にあたっては、富山医科薬科大学薬学部薬物生理学教室の竹口紀晃教授と酒井秀紀助手とスイス国チュウリッヒ大学獣生理学研究所のDr.Dienerとの共同研究体制を構築した。竹口と酒井がそれぞれ1993年9月および1994年1月-2月にチュウリッヒに出張し、Dr.Dienerは1993年10月に来日した。 その共同研究の前半においては、1)遺伝性高ビリルビン尿症病態ラットにおける肝・腸イオンチャネルの異常に関する研究を主として行った。後半においては、2)ある制ガン剤により下痢を発生しているラットにおけるイオンチャネルの異常についての研究を主としておこなった。以下1および2にわけてその研究成果を記述する。 1)遺伝性高ビリルビン尿症病態ラットにおける肝・腸イオンチャネルの異常に関する研究について 我々は最近になって発見された肝解毒ポンプの機能が肝の種々の機能のなかでもとりわけ重要であることを肝細胞の双細胞系を使って示した。肝移植において、免疫抑制剤サイクロスポリンは強い副作用のため使用できないが、FK506は使用可能で、FK506により肝移植が可能になった。このことが、使用される濃度で、サイクロスポリンが解毒ポンプを強く阻害するのに対して、FK506はこのポンプをほとんど阻害しないことにあることを発見し、米国の専門学術誌Transplantationに発表した。 遺伝性高ビリルビン尿症病態ラットの解毒ポンプについて、上記の方法で調べると、解毒ポンプの機能が発現しないことがわかった。また、胆汁酸の輸送速度も低下していた。しかし、解毒ポンプのタンパクは発現していることがわかったので、その機能の欠損はある種の細胞内環境因子の劣化によると推定された。肝細胞のイオンチャネルについて、電気生理学的研究を行った。肝細胞を単離し、低張浸透圧ショックを与えると、細胞は膨張する。その後、細胞内より、カリウムと塩素イオンを放出し、細胞体積をもとに戻す。遺伝性高ビリルビン尿症病態ラットの肝細胞では、カリウムと塩素イオンチャネルそのものは存在するが、塩素イオンチャネルの働きが悪く、細胞体積の回復が遅れることがわかった。腸のイオンチャネルには異常は観察されなかった。この病態ラットでは肝細胞内の環境因子の劣化が指摘された。この部分に関して目下、論文を制作中である。 2)CPT-11による下痢発生機構の解明 CPT-11はほとんどあらゆる種類のガンに対して有効な抗ガン剤として、注目されている薬である。特にこれまで有効な薬がなかった肺のnon-small cellガンに対しても有効である。その投与量の制限の一つはCPT-11がコレラ様の激しい下痢をかなりの割合で引き起こすことにある。その下痢誘発機構はこれまで不明であり、既存の下痢止めは有効でないことが報告されている。下痢発生機構の一つとして、コレラなどにみられる塩素イオンの過剰分泌にともなう水分泌がある。この可能性を確かめるために、ラット腸粘膜を使って、塩素イオン分泌に与えるCPT-11の作用を調べた。その結果、小腸よりも大腸で、CPT-11はより強い塩素イオン分泌を誘発した。また、CPT-11の代謝体であるSN-38のほうがより強い作用を有した。CPT-11の作用は粘膜下にある亜粘膜中の細胞からトロンボキサンA2を分泌し、これが粘膜細胞にあるリセプターに結合し、塩素イオン分泌にいたることがわかった。この機構はこれまで知られていなかったものである。CPT-11による下痢抑制のためにトロンボキサンA2合成阻害剤が有効である可能性を指摘した。この成果は専門雑誌に印刷中である。この成果は特にDr.Dienerがこの領域の専門家であり、この国際共同研究が有効であることを示す。
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