研究課題/領域番号 |
05044165
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
辻本 賀英 大阪大学, 医学部, 教授 (70132735)
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研究分担者 |
KATSUMATA Ma ペンシルバニア大学, 医学部, 準教授
EWERT Donald ウイスター研究所, 助教授
鎌田 真司 大阪大学, 医学部, 助手 (20243214)
恵口 豊 大阪大学, 医学部, 助手 (20243206)
DONALD Ewert ウイスター研究所, 準教授
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
1994年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1993年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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キーワード | bcl-2がん遺伝子 / アボトーシス / リンパ腫 / bcl-2遺伝子 / アポトーシス / がん遺伝子 / 染色体転座 |
研究概要 |
ヒトリンパ腫に見られる染色体転座t(14;18)の解析から同定したbcl-2がん遺伝子は細胞増殖には顕著な関与を示さず細胞死を抑制するというユニークな機能を有する。このがん遺伝子の発見は、種々の生命現象に関わっている細胞死の研究に重要な遺伝的材料を提供すると同時に、がん研究の分野においては細胞死の抑制が発がん過程において重要なステップであるという新しい概念を提示することになった。その後、複数のがん関連遺伝子が細胞死と係わる機能を持つことが示され、細胞死はがん研究においても重要なテーマとなった。 本研究の目的は、発がんに係わる細胞死抑制の分子機構を解明すると同時に、bcl-2活性化を伴うリンパ腫の発生とより高い悪性度の獲得の分子機構を明らかにすることである。 マウス実験系 リンパ腫発生に係わる遺伝子群の解析のために、BまたはT細胞でbcl-2を過剰発現するトランスジェニックマウスを用い、新生児にモロニ-白血病ウイルスを感染させ悪性リンパ腫発生に必要な遺伝子群に分子タグを付ける実験系を利用した。ウイルス感染により悪性リンパ腫発生が促進されB/bcl-2マウスではB、Tまたは未分化なリンパ球由来の悪性リンパ腫が、T/bcl-2マウスでは主として未熟なT細胞由来の悪性リンパ腫が発生した。複数のリンパ腫においてc-myc遺伝子の関与が確認された。このc-myc遺伝子の活性化を伴う悪性度の高い腫瘍の発生過程は、ヒト濾胞性リンパ腫の高度悪性化の過程と類似している。つまりbcl-2を活性化するt(14;18)転座は悪性度の低い瀘胞性リンパ腫に高頻度でみられるが、そこから派生する悪性度の高いリンパ腫のあるものは、t(14;18)転座に加えc-myc遺伝子を活性化するt(8;14)転座を有することが知られている。従ってこの実験系はヒトの瀘胞性リンパ腫の高悪性度獲得プロセス解析の有用な実験モデル系であると考えられる。 トリ実験系 このヒトbcl-2を持つレトロウイルスをニワトリに感染させ、悪性腫瘍の発生をモニターした。ニワトリ6日胎児にウイルスを感染した場合に、約2-4週間の潜伏期の後に、種々の臓器に悪性腫瘍が発生した。コントールに用いたRCASベクター由来のレトロウイルスでは、悪性腫瘍の発生は全く見ることが出来なかった。このことは、ウイルス感染により発生した悪性腫瘍は、ウイルス内に導入したヒトbcl-2がん遺伝子によるものであることを示している。 悪性腫瘍が発生した臓器は、肺、膵臓、肝臓、脾臓および腹腔内である。血液中には赤芽球由来の腫瘍細胞が認められた。6日胎児経のbcl-2ウイルス感染とは異なり、羽化後一日のニワトリへのbcl-2ウイルス感染は、2-4週間の期間内には全く悪性腫瘍を発生するに至らなかった。このことは、悪性腫瘍の発生を促すためにはbcl-2ウイルス感染に特別なウインドがあることを意味しており、悪性腫瘍が由来するターゲット細胞の存否や数に起因している可能性がある。 各種臓器に観察された悪性腫瘍のリニエジを割り出すために、各種抗体を用いた免疫組織学的検討を行なった結果、脾臓、肝臓の腫瘍は骨髄性細胞由来であり、肺と膵臓の腫瘍は、未分化な肉腫であった。腹腔内に生じた腫瘍の由来は未だ判定出来ていない。このようにbcl-2ウイルスの感染により、種々の組織において、種々のリニエジ(赤芽球系、骨髄性、および肉腫)の腫瘍が生じることを示した。各腫瘍はヒトbcl-2を発現しており、数コピーのレトロウイルスゲノムの挿入が認められた。これらウイルスの挿入はモノクローナルでありウイルスゲノムの挿入による細胞内がん遺伝子の活性化が起こっていると考えられる。従ってこれらのウイルス挿入箇所のニワトリゲノムのクローニングを通し、これらの特に固形悪性腫瘍の発生に必要ながん遺伝子の同定が可能になった。
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