研究課題/領域番号 |
05044168
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
堀井 俊宏 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (80142305)
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研究分担者 |
ARMAH George ガーナ大学, 野口記念医学研究所, 研究主任
KRUNGKRAI Je チュラロンコン大学, 医学部, 助教授
BZIK David ダートマス大学, 医学部, 助教授
INSELBURG Jo ダートマス大学, 医学部, 教授
田井 久美子 大阪大学, 微生物病研究所, 教務職員 (00187907)
三田村 俊秀 大阪大学, 微生物病研究所, 助手 (80268846)
森松 克実 大阪大学, 微生物病研究所, 助手 (70263308)
GEORGE Armah University of Ghana Research Chief
JERAPAN Krungkrai University of Chulalongkorn Associate Professor
DAVID Bzik Dartmouth Medical School Associate Professor
JOSEPH Inselburg Dartmouth Medical School Professor
杉山 智彦 大阪大学, 微生物病研究所, 助手 (90252709)
JERAPAN Krun チュラロンコン大学, 医学部・生化学教室(University of Chulal, 教授
BZIK David J ダートマス医科大学, 微生物講座(Dartmouth Medical School, 助教授
ARMAH Geroge ガーナ大学, 野口記念医学研究所(University of Ghana,Nogu, 研究主任
INSELBURG J ダートマス医科大学, 微生物講座(Dartmouth Medical School, 教授
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
10,500千円 (直接経費: 10,500千円)
1995年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1994年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1993年度: 4,500千円 (直接経費: 4,500千円)
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キーワード | 熱帯熱マラリア / マラリアワクチン / SERA遺伝子 / 抗原変異 / コドン使用頻度 / 人工合成遺伝子 / エピトープ解析 / 三日熱マラリア / ワクチン / 合成遺伝子 / SERA蛋白質 / マラリア抗原 |
研究概要 |
ハマダラカによって媒介されるマラリアは年間2億7000万人が感染し200万人が死亡するという最も大きな被害を人類に及ぼしている原虫感染症である。クロロキン、DDTなどの特効薬や殺虫剤により一時は撲滅が可能かに見えたマラリアは、薬剤耐性マラリア原虫株や殺虫剤に耐性の媒介蚊の出現によりその治療と制圧は現在困難な状況に陥っている。一方、マラリア原虫の細胞より十分な量の蛋白質を精製する事が極めて難しいため、マラリア原虫に関する生化学的な解析にも乏しい。さらに、マラリア原虫のcDNAは大腸菌において一般にうまく発現せず、レコンビナント蛋白質として調製することも容易ではないことも解析を遅らせている。 マラリアワクチンの開発は人類の夢の一つであるが、マラリア感染に対する宿主(ヒト)の免疫応答が理解されていないことに加えて、マラリア原虫はその主要抗原のアミノ酸配列を高頻度で変換するための機構を複数有していると考えられる。マラリアワクチンの開発をめざす本研究課題においては、まず、ワクチン候補抗原蛋白質を安定して供給できるシステムの構築を行なった。抗原遺伝子は以下で述べるSERAであるが、本抗原遺伝子はマラリヤ原虫株のなかでもよく保存されていると考えられているが、このSERA遺伝子の抗原変異の頻度について解析をすすめた。 (1)熱帯熱マラリア原虫の培養細胞に対して増殖阻害的に働くマウスのモノクローナル抗体を用いて単離したSERA(Serine Repeat Antigen,113kD)は、赤血球期マラリアのトロフォゾイト、シャイゾント期に大量に発現される蛋白質であり、感染赤血球が壊裂する直前に、47kD、50kD、18kDの三つの断片となる。このSERA抗原はマラリアワクチンの候補抗原として重要と考えられているが、一方、SERA遺伝子のcDNAを大腸菌の発現ベクターに組み込んでも、レコンビナント蛋白質の発現は容易ではなかった。我々は、極端にAT含量の高いマラリア遺伝子とGC含量が高い大腸菌の間におけるコドン使用頻度の違いがレコンビナント蛋白質の発現量を低下させていると考え、熱帯熱マラリアのコドン使用頻度を大腸菌型に変えた、これら三つの断片をコードする人工合成遺伝子を構築し、大腸菌において3種類のSERA蛋白質を大量に発現させた。精製した後、マウス及びラットを免疫し、得られた抗血清を用いてマ
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ラリア原虫の培養細胞の増殖に与える影響を調べた結果、SERA蛋白質のN-末端17-382アミノ酸残基の領域(SE47′蛋白質)がマラリア原虫の増殖に対して阻害効果をもつ抗体を誘導することが明かとなった(Sugiyama et al.,in the press)。 (2)フイールドからの単離株とラボ株合計10種についてSERA遺伝子の塩基配列を決定したところ、SERA抗原の中央部やC-末端領域は極めて保存されていたが、上記(1)の実験でマラリア原虫の増殖に対して阻害効果をもつ抗体を誘導することが明かとなったN-末端領域にはアミノ酸配列の変化が見いだされた。熱帯熱マラリア原虫のMSP-1抗原遺伝子は田辺らによってその抗原変異機構の解析がすすめられているが、本研究において解析を行なった10株についてはすでにMSP-1抗原遺伝子の解析が終了しており、SERAとMSP-1遺伝子の平機構について比較検討を行なっている。現在までのところ、SERA遺伝子はかなり良く保存された抗原であり、重要な機能を担うことが示唆されるが、防御抗体を誘導するN-末端領域については株によって若干の変異を伴っていることが明かとなった(Morimatsu,Horii et al.,in preparation)。 (3)SE47′蛋白質による防御抗体の誘導は、抗血清中の全ELISA価とは独立にアジュバントや蛋白質の形状等、免疫を行なう条件によって大きく左右された。このことはSE47′蛋白質の特定の領域が防御抗体の誘導に関連しており、その領域に対する免疫応答が免疫の条件に依存することを示唆する。そこで、エピトープ解析による防御抗体を誘導する領域の同定を行なうため、15アミノ酸残基よりなる合成オリゴペプチドを多数調製し、SE47′蛋白の全領域をカバーするこれらのペプチドに対してマラリア原虫細胞の増殖阻害能力のある血清と増殖阻害を示さない血清を用いてELISAを行なった。その結果、168-182アミノ酸残基の領域が防御抗体産生に強く関わっていることを示す結果を得た。一方、マラリア原虫細胞に対して増殖阻害的に働くマウスモノクローナルIgM抗体を用いたところ52-66アミノ酸残基領域にエピトープが含まれることが示された。これらの結果は、SERA蛋白質中には防御抗体に対応する複数のエピトープが存在することを示唆する(Pang,Horii et al.,in preparation)。 (4)以上の結果より本研究課題において作成した人工SERA遺伝子によるレコンビンナント蛋白質の発現システムはマラリアワクチン実現にむけて十分な可能性があると考えられる。一方、BCG菌の発現ベクターにこの人工合成遺伝子を組み込むことは、研究計画の年限内に終了することが難しい現状であるが、実用化マラリアワクチンとして極めて大きな可能性があるため継続して研究を行ってゆく。 隠す
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