研究課題/領域番号 |
05044174
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
水野 健作 九州大学, 理学部, 助教授 (70128396)
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研究分担者 |
VANDE Woude 米国国立がん研究所, フレデリックがんセンター(アメリカ合衆国), センター長
中村 敏一 大阪大学, 医学部, 教授 (00049397)
VANDE WOUDE George f. Frederick Cancer Research and Development Center, National Cancer Institute Dire
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
10,000千円 (直接経費: 10,000千円)
1994年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
1993年度: 5,000千円 (直接経費: 5,000千円)
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キーワード | 肝細胞増殖因子 / HGF / c-met / がん遺伝子 / HGF変換酵素 / チロシンキナーゼ / LIMモチーフ / レセプター / 転移 / 人工変異体 / プロテアーゼ阻害剤 |
研究概要 |
肝細胞増殖因子(HGF)は、種々の上皮細胞に対して、細胞増殖あるいは運動能の促進作用、形態形成誘導作用などをもつ多機能性因子である。c-metプロトオンコジーン産物はHGFの特異的なレセプターである。本研究では、HGFとc-metレセプターによる細胞がん化機構の解析および、c-metと相同性をもつプロテインキナーゼのスクリーニングによる得られた3種の新規なプロテインキナーゼ(c-Sea,SkyおよびLIMK)について構造ならびに細胞増殖における機能について解析した。 1.HGFとc-metによる細胞がん化機構の解析 種々のがん細胞におけるHGFならびにc-metの発現をノーザンブロットにより解析した。c-metが上皮細胞ばかりでなく、数種の血液前駆細胞にも発現しており、HGFがこの細胞に対して増殖作用をもつことを明らかにした。また、多くのサルコ-マ細胞においてc-met mRNAの強い発現が認められた。このことは、HGFを発現する正常な線維芽細胞において、c-metが異常発現したことによって、オートクリンループが形成されたものと考えられ、HGFc-met系による細胞がん化の例として興味深い。 2.HGF変換酵素の精製と阻害剤の開発 HGFは不活性型前駆体として生合成され、HGF変換酵素による限定切断によって活性化される。私達は、HGF変換酵素をウシ血清より精製し、分子量65Kの重鎖と32Kの軽鎖から成る2本鎖のプロテアーゼであることを明らかにした。さらに、HGFの活性化を特異的に阻害する目的で、HGF変換酵素を特異的に阻害するペプチドクロロメチルケトン誘導体を合成した。プロHGFの限定切断部位と一致した構造をもつこのペプチド誘導体は、HGF変換酵素によるHGFの活性化を特異的に阻害したが、サルコ-マ細胞の増殖阻害効果は認められなかった。クロロメチルケトン誘導体の細胞培養液中での安定性に問題があると考えられるので、さらに安定な阻害剤の開発を検討中である。 3.c-metレセプターファミリーのクローニング c-metレセプターのファミリーを検索し、さらにこれらのリガンドを同定することによって、新たなHGF様の増殖因子の存在と、これらの増殖因子とレセプターによる細胞がん化機構が解明できるものと考え、研究を行った。既に知られていたトリウイルス性のオンコジーンv-seaのチロシンキナーゼ配列が、c-Metと70%の相同性をもつことから、まずトリc-Sea cDNAのクローニングを行った。c-Seaは、チロシンキナーゼ領域ばかりでなく、細胞外ドメインもc-Metと高い相同性が認められた。次にトリc-sea cDNAをプローブとして、ヒトHep G2ヘパトーマ細胞のライブラリーをスクリーニングした結果、目的のヒトc-sea cDNAは得られなかったが、2種の新規なプロテインキナーゼ、SkyとLIMKをコードするcDNAを得た。現在、c-Seaの細胞外ドメインとヒトイムノグロブリンFcドメインの融合蛋白質を作製し、これを用いてc-Seaに対するリガンドを検索中である。 4.SkyとLIMKの構造と機能の解析 Skyはレセプター型チロシンキナーゼ構造をもち、細胞外ドメインにイムノグロブリン様ドメイン2個とフィブロネクチンタイプIIIドメイン2個をもつことが分った。また、Skyは脳に高発現しており、in situ hybridizationの結果、海馬CA1領域や小脳顆粒細胞層など神経細胞の密に存在する部位で高い発現が認められた。現在、SkyとFcの融合蛋白質を用いて、Skyのリガンドについても検索中である。一方、LIMKはN末端部にLIMモチーフとよばれるZnフィンガー構造を2個もち、C末端部にプロテインキナーゼドメインをもつ細胞内プロテインキナーゼである。LIMKに対する特異抗体を作製し、LIMKがセリン・スレオニンキナーゼ活性をもつことと、細胞質に局在することを明らかにした。
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