研究課題/領域番号 |
05044184
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
井村 伸正 北里大学, 薬学部, 教授 (70012606)
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研究分担者 |
豊田 春香 東京大学, 医科学研究所, 講師 (10197973)
XIA Yiming 中国予防医学科学院, 栄養食品衛生研究所, 室長
BURK Raymond Vanderbilt大学, 医学部, 教授
姫野 誠一郎 北里大学, 薬学部, 講師 (20181117)
YIMING Xia Chinese Acad. Prerent, Med. Dept. of Trace E, Head of De
RAYMOND F Bu Vanderbilt University, Dept. Mediane, 教授
瀬子 義幸 北里大学, 薬学部, 講師 (60133360)
永沼 章 北里大学, 薬学部, 助教授 (80155952)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
7,000千円 (直接経費: 7,000千円)
1995年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1994年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
1993年度: 2,500千円 (直接経費: 2,500千円)
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キーワード | セレン / セレン蛋白質 / 過酸化ストレス / ラジカルスカベンジャー / 遺伝子導入細胞 / 動物種差 |
研究概要 |
必須微量元素セレンは、過酸化物を除去する酵素グルタチオンペルオキシダーゼの活性中心を構成することから、生体内で活性酸素障害防御因子として機能しているものと考えられている。しかし、近年、GSH-Px以外にもセレンを含む蛋白質が存在し、生体内で重要な役割を果たしていることが明らかにされつつある。GSH-Px以外の代表的なセレン蛋白質として、血漿中のセレンの60%以上を結合しているselenoprotein Pがある。本共同研究の米国側分担研究者であるBirkは、selenoprotein Pの存在を世界で最初に見い出し、その性状を明らかにしてきた。最近、当該蛋白質に精製、遺伝子のクローニングに成功し、セレノシステインをコードする(本来、終止コドンである)UGA codonがopen reading frame中に10個存在する極めて特殊な蛋白質であることを発見している。しかし、この蛋白質の機能は、radical scavengerである可能性が示唆されているものの、いまだに不明である。selenoprotein Pの機能を明らかにするためにも、蛋白質の構造解析が急務となっていた。 本研究において、日本側と米国側が互いに共同して研究を行うことにより、selenoprotein Pがヘパリンに親和性を持ち、その親和性がpHに依存して変化すること、ヘパリンとの親和性の差、及び分子量の違いから、selenoprotein Pをいくつかのisoformに分離できること、1つのisoformは、C-末端が2番目のUGA codonの直前であること、すなわち、2番目のUGA codonの一部は終止コドンとして働いている可能性を示した。これらの成果は、米国FASEB meetingで発表するとともに、Arch.Biochem.Biophys.に発表、およびJ.Biol.Chem.に投稿した。 日本側は、セレンの生理作用のみならず、セレンによる活性酸素発生の機構についても研究を行ってきた。一方、米国側Burkは過酸化障害の鋭敏な指標として注目されているF2-isoprostanesをセレン欠乏動物のおける過酸化障害の指標として活用している。本共同研究によって、日本側研究者を米国に派遣することにより、GC-MSを用いたF2-isoprostanesの測定技術を直接習得することができたことは今後の研究の展開の上で非常に意義深い。 中国には、土壌中のセレン濃度が著しく低い地域が存在し、そこで多発していた心臓疾患とセレン欠乏との関連が注目されている。本研究の当初の目的の1つとして、中国のセレン欠乏地域での調査研究を企画していたが、中国側のセレン補給活動が功を奏して、現在では、セレン欠乏症状はほとんど観察されなくなっていることが、中国側との情報交換で明らかになった。一方、中国には土壌中セレン濃度が逆に著しく高いために、セレン中毒症が発生している地域がある。そこで、湖北省恩施市周辺のセレン中毒症発生地域を訪問、調査した。その結果、摂取するセレンの化学形の違いにより、現われる中毒症状の程度が異なっている可能性が見い出された。現在、セレンの化学形別の分別定量方法を日本と中国とで共同して開発中である。 本共同研究において、日米間の共同研究では、selenoprotein Pのisoformの発見とそのcharacterizationという具体的な成果をいくつか出すことができた。しかし、日中間においては、今後の共同研究の準備が整ったという段階に達しただけであることは否めない。しかし、セレンの生理作用のみならず、セレンの毒性発現機構についても活性酸素の関与を追及してきた日本側が、実際の人間の病気としてセレン欠乏症と中毒症の両方を持つ中国側と共同研究を行う基盤を持つことができたことは、今回の共同研究の大きな成果であったと評価できる。また、セレンの生理活性を遺伝子レベルで解析するための研究基盤造りを行っている中国側に対し、日本側、および米国側から本共同研究を通して多くの技術供与、プローブの提供などを行うことができた。
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