研究課題/領域番号 |
05044188
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
田村 謙二 東海大学, 医学部, 助教授 (20163686)
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研究分担者 |
WADE Paul R. コロンビア大学, 解剖細胞生物学教室, Research A
WOOD Jackie オハイオ州立大学, 生物学教室, 主任教授
SCHEMANN Mic MaxーPlanck研究所, 主任研究員
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
1994年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1993年度: 4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
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キーワード | 腸管神経 / サブスタンスP / 求心性神経 / 感覚神経 / セカンドメッセンジャー / G蛋白 / Calbindin / 直腸 / 胃 / モルモット / 迷走神経 / 骨盤神経 |
研究概要 |
平成6年度は、腸管壁内神経叢内で感覚神経としての機能していると考えられているAHタイプの神経細胞を用い、1)外来性感覚神経終末から放出されるサブスタンスPの作用とその細胞内情報伝達機構と 2)AH細胞内のカルシウム結合蛋白の存在と形態の相関、を主に検討した。1)の計画ではモルモットの小腸アウエルバッハ神経細胞を用いた。腸管を切除した後、アウエルバッハ神経縦走筋層上に露出し、神経細胞内にガラス微小電極を刺入し細胞内電位を記録した。神経節間の神経線維束を電気的に刺激しすることにより、Slow Excitatory Postsynaptic Potentials(S-EPSP)と呼ばれる、持続の長い(5-60秒)興奮性シナプス電位を誘発した。またサブスタンスPを細胞外から記録している神経細胞に与え、S-EPSPに類似した興奮性応答を誘発した。このような状態で、標本を貫流しているクレブス液に細胞内伝達機構に作用する種々の薬剤を投与して、S-EPSPやサブスタンスPに対する応答が変化するかを検討した。この結果、細胞外から与えた、百日咳毒素(PTX)によってサブスタンスPによる反応はおさえられ、またS-EPSPもやや抑制された。また記録電極内にあらかじめ非水解性のGTP-γ-Sを封入しておくと、これらの興奮性応答は持続性になることが観察された。このことからモルモットの小腸の感覚神経細胞に発生する興奮性電位は、G蛋白とセカンドメッセンジャーを介する物であることが判明した。さらに、サブスタンスPによる応答はPTXに感受性のあるG蛋白によるものであり、S-EPSPの一部分も同じG蛋白を介すると考えられた。しかしながら、両者の細胞内機構は必ずしも同一でないことから、S-EPSPを誘発する未知の興奮性の神経伝達物質が存在することが示唆された。 2)の感覚神経細胞の形態とカルシウム結合蛋白の関係性は、モルモットの下行結腸のアウエルバッハ神経叢をもちいて行われた。まず1)と同様に、結腸粘膜とない輪状筋層を剥離したアウエルバッハ神経標本を作製した。これらの神経細胞をあらかじめ細胞内の移行性の高いトレーサー(neurobiotin)を先端に封入したガラス微小電極で刺入し、それぞれの神経細胞の電気活動を記録した後、細胞内にこれを電気泳動的に注入した。実験終了後、結腸標本を固定し、組織化学的手法でそれぞれの神経細胞の形態を同定し、またCalbindinと呼ばれるカルシウム結合蛋白にたいする抗体を用いた免疫化学的手法を用いて、細胞形態との関連性検討した。この結果、Calbindinは軸策を一つしか持たないSingle Long Process(SLP)神経細胞と複数の軸策を持つMultiple Long Process(MLP)神経細胞の両者に発見された。これまで小腸では、複数の軸策とAHタイプの電気的特性を持つ神経細胞のみにCalbindinが存在するとされており、その軸策の一部が粘膜を支配していることから、Calbindinが感覚神経のマーカーとして用いられるとされていた。しかしながら、今回のモルモット下行結腸での実験結果は、これまでの小腸での結果と矛盾してた。このことは、消化管の部位において腸管神経の形態や特性が異なっており、これはそれぞれの部位で特有の機能を遂行するために分化した結果であるという仮説を支持する一つの証拠であると考えられた。また同様に結腸では、AHタイプの電気的特性と細胞形態とのあいだの厳密な相関は存在せず、電気活動のみでその機能を判断することは不可能であると判断された。
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