研究課題/領域番号 |
05044189
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
岩本 晃明 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教授 (60046117)
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研究分担者 |
広明 秀一 日本ロシュ(株)研究所, 生物工学部門, 研究員
和田 健司 日本ロシュ(株)研究所, 生物工学部門, 研究室長
古市 泰宏 日本ロシュ(株)研究所内, (株)エイジーン研究所, 所長
DE Lamirande McGill University Urology Research Labor, Research P
GAGNON Claud McGill University Urology Resaerch Labor, Director
田中 宏樹 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助手 (00217069)
EVE de Lamir McGill University, Urology Research Labor, research p
CLAUDE Gagno McGill University, Urology Research Labor, director
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
1994年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
1993年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
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キーワード | 精子運動抑制因子 / 精嚢蛋白 / 精漿 / 除膜精子 / 精子無力症 / Spermadhesin / 精嚢 |
研究概要 |
精嚢から分泌され精漿中に存在するブタ精子運動抑制因子(Seminal Plasma Motility Inhibitor以下SMPI)は、分子量14000,16000,18000の3つのポリペプタイドから構成され、その14000のポリペプタイドのcDNAクローニングに昨年度成功した。この645bpのboarSPMIcDNAの核酸シークエンスの分析では137のアミノ酸残基を有し、21アミノ酸残基のシグナルペプタイドと116アミノ酸残基の分泌蛋白を含んでいる。boar SPMIにはN-linked glycosylation siteがN^<15>-Y-SとN^<50>-L-Tの2カ所にあり、アミノ糖の分析結果からN^<50>-L-Tはoligosaccharide chainを含んでいることが推察された。boar SPMIのN末端アミノ酸25残基までと完全に一致していた、ブタ精子頭部に存在するzona pelluciba-binding glycoprotein,AQN-3の全アミノ酸配列とboar SPMIを比較したところ、97%の相同性を有していた。このAQN-3のcDNAクローニングはいまのところ報告されていない。最近、低分子量蛋白がブタ精子及び精漿から分離されており、これらの蛋白はspermadhesinと呼ばれている。精子に結合するspermadhesinはdecapacitation factor,acrosomal binding factor,heparin binding propertiesによるcapacitation factorあるいはzona pellucida glycoproteinに対してのprimary receptor等の多機能にわたる作用を持つ。spermadhesin familyには現在11のメンバーが含まれており、boar SPMIは12番目のspermadhesin familyと考えられる。boar spermadhesinと相同性を有する蛋白は他の種では今のところ報告されていない。しかしながらヒト精漿に存在するSPMIはboar SPMIとある部分、アミノ酸配列が似ている可能性が考えられるが、現在のところ不明である。SPMIがspermadhesin familyの持つ多くの機能を有するかどうか今後の研究所課題にしたい。 ブタの精巣、精巣上体、精嚢、前立腺、尿道腺、腎臓、膀胱、肝臓、脾臓等の臓器、そしてヒト精嚢にて各臓器のmRNAを抽出してNorthern blottingを行ったところ、3時間の露出ではSPMI mRNAはブタ精嚢のみに発現していた。24時間の露出ではブタ精嚢の発現量はさらに顕著となり、わずかに発現したブタ前立腺を除いて他の臓器には発現が見られなかった。前立腺にみられたmRNAが発現量からおそらく、mRNAが高濃度に存在する精嚢上皮が混入したものではないかと考えた。ヒト精嚢は6検体調べたがいずれもboar SPMIと相同なmRNAの発現を見なかった。ブタとヒトのSPMIの構造上の相違が示唆され今後の研究課題としたい。 クローニングしたSPMIをpQE30 vectorに組み込んで大腸菌にてSPMI蛋白を発現させる系の作製に成功した。発現蛋白はWestern blotting法で抗SPMI抗体と反応することが確認された。しかし得られた蛋白を種々の溶媒で処理しSPMI生物学的活性を調べてみたが、活性を持った状態で溶解することが出来なかった。この点につき共同研究者Gagnon教授と共に実験を重ね、さらに他の海外研究者との情報交換にても、このプロジェクトの研究期間中には解決しなかった。 臨床研究として精子無力症患者の運動不良な精子の細胞内抽出液にSPMIと同一の抑制因子が存在しているかの研究を行っている。除膜精子の運動を抑制する程度とSPMI抗原量がおおむね相関するデーターを得ているが、これだけで精子細胞内抽出液中にSPMIが存在するという証明にならないものと判断し、今後、精子細胞内抽出液の精漿からの混入の可能性を否定する実験が必要である。すなわち精漿中のあるマーカーを見つけ精漿が精子細胞内抽出液に混入していないとのデーターを示さねばならず今後の研究課題としたい。
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