研究課題/領域番号 |
05044194
|
研究種目 |
国際学術研究
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 共同研究 |
研究機関 | 国立精神・神経センター |
研究代表者 |
田平 武 国立精神・神経センター, 神経研究所, 部長 (80112332)
|
研究分担者 |
コンデ ベルナルド・ジョ サントトマス大学, 医学部, 助教授
バナロ ホセ・C. サントトマス大学, 医学部, 助教授
オルディナリオ アルテミ サントトマス大学, 医学部, 主任教授
山村 隆 国立精神, 神経センター神経研究所, 室長 (90231670)
NAVARRO Jose c. ibid
CONDE Bernardo George l. ibid
ORDINARIO Artemio t. Faculty of Medicine and Surgery, University of Santo Tomas
ベルナルド.ジョージ.L コンテ サントトマス大学, 医学部・神経内科, 助教授
ホセ.C ナバロ サントトマス大学, 医学部・神経内科, 助教授
アルテミオ.T オルディ サントトマス大学, 医学部・神経内科, 主任教授
|
研究期間 (年度) |
1993 – 1994
|
研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
|
配分額 *注記 |
6,500千円 (直接経費: 6,500千円)
1994年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1993年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
|
キーワード | 同心円硬化症 / 多発性硬化症 / 脱髄 / HLA / 脱髄疾患 / 急性散在性脳脊髄炎 / 髄鞘 / 脳炎 |
研究概要 |
平成5年と6年の2年間本研究所費を得てフィリピンに多発する同心円硬化症(バロ-病)の調査研究を行なった。合計6回マニラのサントトマス大学医学部神経内科を訪問し、合計34例のバロ-病、8例の多発性硬化症、2例の急性散在性脳脊髄炎、28例の他疾患コントロール、45例の正常健康者から臨床データ、画像データ、血液、髄液を収集した。34例のバロ-病の中には、2家系5例の家族性発症例が含まれ、2例は培検でバロ-病(同心円硬化症)であることが確認された。患者はルソン島の全土に分布し、他の地域としてミンダナオ島のダバオ地区を1回だけ調査したが、ここにもバロ-病の存在を確認し、フィリピン全土に分布することが分かった。また、5例は来日中に発病した症例であった。平均発病年齢は26.5歳で、男女比は1:1.6で女性が少し多かった。発病には季節性はないが、家系内あるいは同室居住者に発病がみられ、何らかの感染因子の関与が考えられた。発病に先立つ前駆症状は一部にみられ、軽度の発熱、全身倦怠などが見られた。多くは行動異常(訳の分からないことを言う、異常に無口になる、話の受け答えがおかしい)などで発病、急性に発語がなくまた言語理解も不能となり、片麻痺、あるいは四肢麻痺となり、ねたきりの状態となり、食事も自分でとることができず、両便失禁の状態となるのが典型的であった。MRIは大脳半球白質に広汎または多巣性の病巣を示し、T1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号を示し、造影剤による増強効果は軽度、一部の症例では同心円状病巣がみられた。髄液は透明、白血球数は正常ないし軽度増加、総タンパクは多くは正常であり、IgGの増加がみられた。ステロイドによく反応し、多くは完全寛解もしくは軽度の麻痺を残して回復し、再発は1例のみに1回だけみられた。3例が死亡し、主な死因は肺炎であった。8例の多発性硬化症のうち6例は視神経脊髄型であり、再発、寛解をくりかえした。 バロ-病の発症機序を解明する為に免疫組織学的検討を行った。病巣にはHLA-DR陽性マクロファージが多数浸潤し,少数のT細胞を認めたが、B細胞は認めなかった。初期病巣は小静脈を中心に有した。HLAとの相関をみると、DRB11502が74%にみられ、これは対照の36%より有意に高頻度であった。そのうち、DRB11502をホモでもつものが44%にみられ、MSの0%、対照の5.6%より有意に高頻度であった。また、成人発症バロ-と小児期発症バロ-に分けると、成人発症バロ-の方がより高い相関を示した。次に末梢血リンパ球のプロテオリピッドタンパク、ミエリン塩基性タンパクに対する増殖反応をみたが有意の反応はみられなかった。血清糖脂質抗体をしらべたが有意に上昇したものはなかった。感染因子をしらべる為に、患者血清および末梢血リンパ球をマウス、SCIDマウスに注射したが、病気の移入はみられなかった。患者血清中各種ウイルス抗体をしらべたが、有意の上昇を示すものはなかった。 以上、バロ-病はフィリピンに多発すること、免疫を介する脱髄疾患である可能性が高いこと、HLA-DRB11502と高い相関を示すこと、特定の感染因子は今の所同定されないという結論に達した。MSとの違いは、急性単相性であること、画像上病変の分布、形が異なることから、異なる病態であると言えるが、MSの1側面を示しており、本症の解明はMSの解明に連なるものと確信した。
|