研究分担者 |
MCCARRICK Mi カリフォルニア大学, ロサンゼルス校・物理学科, 助手
WUERKER Ralp カリフォルニア大学, ロサンゼルス校・HIPAS Observatory, 副所長
WONG Alfred カリフォルニア大学, ロサンゼルス校・物理学科 HIPAS Observatory, 教授所長
中村 良治 文部省, 宇宙科学研究所, 助教授 (20013708)
桜井 亨 東海大学, 工学部, 教授 (00004416)
MCCARRICK michael j. Department of Physics The University of California, Los Angeles Res.Assoc.
|
研究概要 |
平成5年度中に、本研究計画の一環として、アメリカ合衆国アラスカ州フェアバンクス市近郊に位置するHIgh-Power Auroral Stimulation(HIPAS)実験施設を用いた日米共同電離圏加熱実験キャンペーンを2度(平成5年8月、及び平成6年2月〜3月)実施した。今後の共同実験の円滑化のため、各種計測方法のテスト並びにそれらのコーディネーション法のテストに重点を置いた。 ここで、“電離圏加熱実験"とは、強力なHF帯電波を地上局より発信し、これで電離圏プラズマを照射し、高電力電磁波とプラズマとの相互作用により電離圏中に生じるプラズマ乱流を含む各種プラズマ波動現象、プラズマ加熱現象などについて調べる研究である。現象が自然発生的に生じるのを“待つ"のではなく、“能動的"に自然に働きかけて実験を行うことから“能動電離圏実験"とも呼ばれる。電離圏を境界が無く、閉じ込めの心配も無い巨大なプラズマの実験室として用いようという考え方である。 さらに平成5年度中には、共同研究者、研究協力者が一堂に会し、現在までの研究活動、並びに今後の研究の展開に関して討議する機会をも持つことができた。以下に、HIPASキャンペーンより得られた成果の概要を中心に記す。 1.ELF,VLF波動の励起 HIPASの加熱HF波(通常2.85MHz)を振幅変調するなどしてELF,VLF帯の低周波波動を励起することが可能である。VLF帯ではホイッスラ-波の励起が確認されている。今回はこれに加えて陽子サイクロトロン周波数域のELF帯波動の励起が試みられた。地上観測と同時に、EXOS-D(あけぼの)衛星の低周波プラズマ波動観測グループによる衛星観測も実施された。HF波加熱によりプラズマ導電率を人為的に変化させ、極域エレクトロジェット電流に部分的に変調をかけることで、自然界の自由エネルギーを有効に利用できることが、効率の良い低周波波動励起につながるものと考えられている。 2.リオメータによる観測 HIPAS施設の北西35km程離れた地点に8本のアンテナアレイより構成されるリオメータを設置し(受信周波数29.75MHz±100kHz)、HFによる加熱領域の高度及び拡がりの測定を試みた。低周波波動励起のソース領域の定量的な同定が可能となり、励起機構の解明に貢献しうる。因みに、電離圏加熱実験の効果のリオメータ観測は、我々の知る限り今までに例をみない。 3.HFドップラー測定 加熱HF波のものと周波数が僅かに異なる低出力のテスト波を用いてHFドップラー測定を行い、加熱効果によるHF波の反射点の動的な変化を計測した。 4.HFフェイズドアレイ・レーダー テストHF波の反射信号(振幅、位相)を多点同時観測し、ホログラフィックな手法を用いて加熱領域の密度変調の様子を定量的に測定するというアイディアである。多点観測に必要な受信タイミングの取り方についてテストをした。 5.HFライダー観測 高電力HF波とプラズマとの相互作用の結果として発生する高速電子が励起する原子・分子をライダー観測で同定し、高速電子の発生機構などについて調べるというもので、色素レーザー・光学系の準備が終了し、テストが行われた。 6.今後の課題 電離圏加熱実験では、プラズマ密度にかかる変調の様子を定量的に知ることが現象の全体像を把握する上で極めて重要である。個々にテストされた計測手法を同時にコーディネートして用いることがますます重要である。 低緯度域における実験で、電離圏中に強いプラズマ乱流が生じることを見出している。極域では、オーロラ粒子の存在と相俟って、加熱実験中の乱流現象の研究は物理的に極めて興味ある今後の課題である。
|