研究分担者 |
GELBERG Adri ケルン大学, 物理学教室, 教授
VON Brentano ケルン大学, 物理学教室, 主任教授
水崎 高浩 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (50251400)
中田 仁 順天堂大学, 医学部, 助手
杉田 道昭 日本原子力研究所, 研究員
吉田 宣章 理化学研究所, 研究員 (80182773)
吉永 尚孝 埼玉大学, 教養部, 助教授 (00192427)
有馬 朗人 法政大学, 工学部, 教授 (40011465)
VON Brertano Peter Universitat zu Koln, Department of Physics, Professor
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研究概要 |
本研究計画「原子核変形の新しい側面」では,原子核の四重極及び八重極変形について,静的なもの及び動的なもの両者に関して,様々な角度から研究した。研究に用いた理論的手段は,相互作用するボゾン模型である。 質量数が130前後のXeやBaのアイソトープは,ガンマ不安定変形を起こす事が知られており,このような構造は相互作用するボゾン模型では,O(6)対称性の極限により記述される。この共同研究では,^<130>Baという原子核に於いて,このO(6)対称性がどこまで成立しているかを,特にサイドバンド状態のエネルギー準位に注目して研究した。その結果,O(6)対称性がきわめて良く成立している事を,ケルン大学の新しい実験データが示している事が確められた。 O(6)対称性による記述は完全なものではあるが,数学的に過ぎて,あまりにも抽象的である。つまり,それによっては物理的直観が得られないという欠点がある。所が,この共同研究の過程で,大塚は,拡張された意味でのフォノン的構造をO(6)対称性が持っている事を見出し,ケルン大学のブレンターノらとそれを完成させた。この考え方では,O(6)対称性は変形度が有限の平衝状態の上にのっかった,フォノン励起と解釈され,はるかに直観的になる。現在,この考え方をO(6)対称性がこわれている場合へ拡張する研究を東京大学とケルン大学で共同して進めている。 相互作用するボゾン模型による量子カオスの研究も並行して進められた。水崎,大塚,ブレンターノによる回転減乗(Rotational Damping)に於けるガンマ不安定変形効果の研究,及び,吉永とブレンターノによる巾とカオスの関係の研究が行なわれてきた。両者とも大変興味深い成果を出しつつあり,現在も精力的に研究が行なわれている。 相互作用するボソン模型の内,陽子-中性子の自由度の入っている,陽子-中性子相互作用するボゾン模型(IBM-2と通常略称)の研究も行なわれた。XeやBaで質量数130近辺の原子核では,磁気的遷移が異常に強くなる事が,大塚と筑波大学の古野によって指摘されている。それについての実験データがケルン大学にて得られて,その解析を共同して行っている。 IBM-2にさらに奇粒子をつけ加えたものを,IBFM-2(Interacting Boson-Fermion Model)というが,それによって奇核に於けるハサミ型モードの研究を行って,ケルン大学のチルゲスらの行った実験の結果と比べるべく研究している。これは,主に吉田が行っている。 吉田,大塚は,IBFM-2を用いて,^<125>Xeや^<127>Xeという原子核のレベル構造を研究して,ケルン大学のグループによって最近まとめられた実験データの解析を行った。実験で求められたエネルギー準位及び,分岐比について非常によい一致が見られて双方にとって大変満足のいく結論が得られつつある。 今後は,以上の研究を継承発展されると同時に,O(6)対称性に於けるフォノン構造の研究により得られた,“Q-フォノン"の概念を一般化すべく,振動核から回転核までをカバーする,新しいフォノンの概念を発展させつつある。
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