研究課題/領域番号 |
05044209
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
田崎 和江 金沢大学, 理学部, 教授 (80211358)
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研究分担者 |
KIM Soo Jin ソウル国立大学, 理学部, 教授
奥野 正幸 金沢大学, 自然科学研究科, 助手 (40183032)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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キーワード | 日本 / 韓国 / 浮遊塵 / 酸性雨 / 大気汚染 / NO_2 / イオウ酸化物 / SEM |
研究概要 |
本研究では、酸性雨、温暖化の原因である大気汚染物質の特性とその偏西風による空輸システムについて日本と韓国において、調査、研究を行なった。それにより、韓国、ソウル市周辺における大気汚染の現状を明らかにし、更に日本(金沢)と韓国(ソウル)で採集された塵の詳細な評価と比較を行ない以下のような成果を得た。 1、田崎と奥野は韓国・ソウル市を調査、研究のため訪問し、韓国側研究分担者のKIM氏とともに、大気汚染の現状調査、大気中のNO_2の測定、ビデオカメラによるかすみの状態の撮影、降下塵の収集及びエア-サンプラーによる浮遊塵の採集を行なった。また、同様の調査、採集を日本(金沢市)でも行ない比較を行なった。 2、1で調査研究の結果、ソウル市街中心部では視界が約1000m程度まで低下する場合があることが観測された。この現象は、12月期の気温が氷点下の午前中に観測され、当地の大陸的な気候による汚染物質の停滞によるものと考えられる。このことは、6箇所でのNO_2の濃度(93年12月)が一般の市街地での平均値よりかなり高かったこととよく一致している。また、この汚染の程度は中心地からの観測では観測方向により違いが認められ、地形や風向きが影響を与えていると思われる。また、これ以外にコンクリートの建物や像にエロ-ジョン(風化)によるものとみられるつららがみられ、酸性雨が降下していると推定された。以上の調査結果はソウル市の大気汚染の状況は冬期であることを考慮してもかなり進んだ状態にあることを示している。これらの、原因としては自動車の排気ガスが第一に考えられるが今後より広範囲にわたる原因の究明が必要である。 3、ソウル市周辺で採集した塵の電子顕微鏡による形態の観察と組成分析の結果、これらの塵は、粘土鉱物だけでなく、多くの硫黄酸化物やマンガンを主とした重金属を含んでいることが明らかになった。これらの物質は大気汚染の原因が天然の微細な鉱物粒子のみならず、自動車等の生活による燃料の消費や工業生産活動により排出されるガスや粉塵による寄与が大きいことを示唆するものである。特に、硫黄やカルシュウムを多く含む、化石燃料の残留物である多孔質の球状の塵が多く観察された。また、こういった物質の生成される条件で酸性雨が凝集したものと考えられる。しかしながら、これらの推定される原因が局地的なものかより広範囲なものかについては今後の調査研究によって明らかにできるものと期待される。 4、また、金沢市周辺での調査でも酸性雨の兆候が観察され、この原因として従来より、硫黄酸化物が考えられているがその詳細は不明であった。今回、金沢市で採集した浮遊塵や降下物質のなかで、あられやひょうに含まれる残留物のなかに小さな粒状の物質が含まれていることが電子顕微鏡による観察の結果明らかになった。また、この粒状の物質には分析の結果、カルシュウムを主とする硫黄酸化物が顕著に含まれることがわかった。さらに、これらの含有物の形態(小粒状)は天然で一般によく観察される柱状や針状結晶の火山性の降下物とは明らかに異なる。これらの事実から、降下性の残留物中に見られる粒状物質は人間の生活活動や生産活動に伴う人工的な物質であると推定される。また、このような物質の凝集する条件では雨や霧は酸性となり、酸性雨をもたらしていると考えられる。このような降下物は韓国で見られた降下物と組成や形態のうえで関連性が認められるが直接的な関係については今後の調査、研究により明らかにされると期待する。また、これらの降下物の原因についてはさらに広い地球的な視野での考察が必要であろう。 5、本研究の成果は、両国の研究者で連絡をとりながら、調査・分析について検討及び討論を行なった結果である。ここで、得られた成果については、さらに考察を加えた上で学会等で発表し論文としてまとめる予定である。
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