日韓産業政策の比較研究

研究課題

研究課題/領域番号	05044210
配分区分	補助金
研究機関	一橋大学
研究代表者	米倉誠一郎一橋大学, 商学部附属産業経営研究施設, 助教授 (00158528)
研究分担者	金宗絃ソウル大学, 経済学部, 教授丁哉錫韓国外国語大学, 総長徐正解一橋大学, 商学部附属産業経営研究施設, 専任講師 (10242356) 趙東成ソウル大学, 経営学部, 教授中谷巌一橋大学, 商学部, 教授 (10028053) 東邦仁虎東京理科大学, 経営学部, 教授三輪芳郎東京大学, 経済学部, 教授 (90109158) 竹内弘高一橋大学, 商学部, 教授 (60163383) 金正年ソウル大学, 経営学部, 教授宋梓延世大学, 総長李光賢高麗大学, 文理学部, 教授慎侑根ソウル大学, 経営学部, 教授金泰賢延世大学, 商経学部, 副教授郭相瓊高麗大学, 商経学部, 教授鄭英一ソウル大学, 経済学部, 教授魚允大高麗大学, 商経学部, 教授姜光夏ソウル大学, 経済学部, 教授堀内昭義東京大学, 経済学部, 教授 (00018029) 矢坂雅充東京大学, 経済学部, 助教授 (90191098) 藤本隆宏東京大学, 経済学部, 助教授 (90229047) 伊藤元重東京大学, 経済学部, 教授 (10128564) 伊丹敬之一橋大学, 商学部, 教授 (90017492) 野口悠紀雄一橋大学, 経済学部, 教授 (90008649) 野中郁次郎一橋大学, 商学部附属産業経営研究施設, 教授 (30065437) 土屋守章東京大学, 経済学部, 教授 (60012118) 宮川公男一橋大学, 商学部, 教授 (60017473) 今井賢一スタンフォード大学, 経済学部, 教授 (80017467) SONG Ja Professor, Yonsei University KIM Jong-hyun Professor, Seoul National University CHO Dong-sung Professor, Seoul National University KIM Chung-nyun Professor, Seoul National University CHUNG Jai-suk Professor, Haukook University of Foreign Studies HIGASHIKUNI Hitotora (YUN) Professor, Science University of Tokyo SEO Joung-hae Assistant Professor,Hitotsubashi University SHIN Yoo-keun Professor, Seoul National University KANG Kwang-ha Professor, Seoul National University KIM Tae-hyun Associate Professor, Yonsei University EUH Yoon-dae Professor, Korea University LEE Gwang-hyeon Professor, Korea University KWAK Sang-kyung Professor, Korea University CHUNG Young-il Professor, Seoul National University
研究期間 (年度)	1993
研究課題ステータス	完了 (1993年度)
キーワード	産業政策 / 日本の産業政策 / 韓国の産業政策
研究概要	この研究では、日本と韓国政府のとってきた産業政策を比較分析をすることによって両国の産業政策を評価し、さらに産業政策の国際移転可能性や今後の方向性を探ろうと試みた。具体的には産業政策を、産業政策と経済政策、産業政策の歴史と当面課題、環境変化と産業構造政策、産業育成政策、産業調整政策、農業政策、金融産業政策、独寡占規制と中小企業政策、産業政策と企業経営、産業政策と国民経済の10項目のテーマに細分して、日韓の各々の専門家によって調査・検討・分析を行い、産業政策の理論と実態について集大成を行った。日韓の産業政策の共通点と相違点に注目しながら、主な研究成果をまとめると次のようである。 1.産業政策は、産業の効率性を高めるための政策(効率政策)と、企業の私的行動を社会的に望ましい方向へ誘導するための政策(衡平成策)に分けられるが、歴史的にみると日韓両国において政策の中心は効率政策であった。産業効率政策の基本的目標は、外部性のある資源創出過程への援助、ストック配分に巨大な歪みがある場合の修正、市場プロセスのためのインフラの整備である。また、効率政策の成功の条件としては、政府への信頼と介入が企業行動の枠作りにとどまることであった。とくに、注目すべき点は、政策の有効性を決めるのは政策手段や制度等にあるのではなく、政策の形成プロセスと政策の実行プロセスにあるということである。一方、産業政策と経済政策の関係については、マクロ経済政策が産業政策に従属的な役割を担うのであれば、究極的には産業構造調整を遅らせて産業体質を弱体化させ、国際競争力を弱める逆機能を生み出しかねないという結論が得られた。 2.韓国の産業政策は基本的に日本の政策をモデルにしている。両国の産業政策を比較してみると、政策の基本的な目標、政策手段、諸制度等はまったく同じであるが、具体的な運用の面では相当異なる。例えば、日本の場合は国内市場の成長が先進国輸出に先行しているが、韓国はひたすら輸出奨励政策であった。次に、日本はネットワークによるフレキシビリティの指向であった。すなわち、中間財である部品や資本財への投資が奨励され、それが組立の部門と有機的なつながりのもち、大企業の成長とともに中小企業も共存するような結果を生み出した。それに対して、韓国は組立中心の少品種大量生産指向であった。当然韓国の場合は大企業中心の政策である。要約すれば、日本の政策実行過程は段階的なタイプであるとすれば、韓国の場合はすべてが同時進行的に行われる圧縮型といえよう。 3.産業政策が国民経済に及ぼした影響を効率性と衡平性という二つの尺度から評価してみると、両国の産業政策は効率性の側面からは非常に肯定的な影響を及ぼしたと判断される。衡平性に関して評価してみると、日本の場合はそれほど問題にならない。なぜならば、部品供給の中小企業が組立の大企業と組んだ有機的なネットワークによって、中小企業が疎外されずに成長してきたことからであろう。しかし、中小企業は疎外され組立の大企業中心に圧縮した形で産業政策が展開されてきたは韓国の場合に衡平性の問題は深刻である。とくに、財閥企業の経済力集中現象は深化されており、これは経済の問題を越えた社会問題化されているほどである。以上が、日韓産業政策の比較分析から得られた総括的な研究結果であるが、今後の研究の展開としては、各産業別に深層的な事例研究を通じて研究結果をよりミクロ的に検証することと、また、その結果を下に他の国への適用可能性について研究をより深化させることである。