研究分担者 |
ポルス オンノ ケンブリッジ大学, 天体物理研究所, 研究員
クラーク キャシー ケンブリッジ大学, 天体物理研究所, 研究員
ホワイト サイモン D. ケンブリッジ大学, 天体物理研究所, 講師
ボネル イワン ケンブリッジ大学, 天体物理研究所, 研究員
アーセス スベール J. ケンブリッジ大学, 天体物理研究所, 研究員
エゲルトン ピーター P ケンブリッジ大学, 天体物理研究所, 副所長
ヘッギー ダグラス C. エディンバラ大学, 数理統計科学, 教授
稲垣 省五 京都大学, 理学部, 助教授 (80115790)
大野 洋介 東京大学, 教養学部, 学振特別研究員DC1
福重 俊幸 東京大学, 教養学部, 学振特別研究員DC1
船渡 陽子 東京大学, 教養学部, 学振特別研究員DC1
上野 宗孝 東京大学, 教養学部, 助手 (30242019)
泰地 真弘人 東京大学, 教養学部, 助手 (10242025)
牧野 淳一郎 東京大学, 教養学部, 助手 (50229340)
戎崎 俊一 東京大学, 教養学部, 助教授 (10183021)
杉本 大一郎 東京大学, 教養学部, 教授 (10022592)
CLARKE Cathey Institute of Astronomy, Cambridge Univ.
EGGLETON Peter P. Inst. of Astronomy, Cambridge Univ.
WHITE Simon D.M. Inst. of Astronomy, Cambridge Univ.
POLS Onno Institute of Astronomy, Cambridge Univ.
AARSETH Sverre J. Inst. of Astronomy, Cambridge Univ.
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研究概要 |
日本側では現在、科学研究費特別推進研究のもとで重力多体問題専用計算機を製作中である。この共同研究の目的は、その専用機用のソフトウエアを英国側の研究者と共同開発することにある。今年度行なった研究の実績は以下のようになる。 1.現在テラフロップス・マシンに使うチップとソフトウエアのテスト用に持っているテストボードをもとに、新たなボード(HARP-3と略称)を泰地・蜂巣が中心になって設計した。これを使うことで、英国側のAarsethがケンブリッジに居ながらにして、テラフロップス用のソフトウエアを開発することができる。このボードは1994年6月頃完成し、英国側に引き渡されることになっている。 2.1994年3月5日より3月17日まで、Aarsethが来日し、現在あるテストボードを専有し、牧野・泰地と共同してHARPのためのコード開発を行なった。この新しいコードはそれまでのAarseth codeとは異なり、Hermite補間法を使って時間積分を行なう。これは、Aarseth codeと比較して、単純で、より安定で、時間ステップを2倍長く取れるなどの長所を持っている。短所としてはステップあたりの計算量が2倍程度増えるが、これは専用機化することで克服できる。Aarsethは約2週間の滞在の間に彼のHermite codeをテストボード上にインプリメントすることに成功した。現在のコードは、1個の連星が系の中に存在する場合についてであるが、実際に専用機の上でHermite codeを動かして、コードの有用性を実証した意味は大きい。 3.蜂巣は、2月7日より2月15日までケンブリッジ大学天体物理研究所に滞在し、Aarseth,Eggleton,White,Bonnel,Pols,Clarkeと球状星団中における連星系の物理的取り扱いについて今後の方針などの議論を行なった。EggletonとPolsのグループは星の進化をいちいち計算しないですむように、星の質量と時間を与えると星の半径、表面温度、明るさなどがすぐに計算できる、半経験公式を定式化することを目指している。現在の段階では、星の種族Iといわれるものについては、半経験公式がほぼできた。ただし、球状星団中の星は種族IIに属しているので、来年度は種族IIについての半経験公式を作成する予定である。これができると、星同志の衝突や、連星系の進化などを多体問題の計算コードに組み込みやすくなる。また、White,Bonnel,Clarkeのグループは、球状星団中でおきる星同志の衝突の流体力学的計算を行なって、星の潮汐補獲の条件を計算する予定である。また、Polsは来年度の6月に日本に2週間程度滞在し、新しくできるHARP-3ボードの取り扱いを習得する予定である。また、2月15日より2月19日までエディンバラ大学に滞在し、Heggieと今後の共同研究全般についての議論を行なった。その結果、来年度はPols,Heggie,Bonnel,Clarkeの来日が確定した。 4.船渡は2月7日より2月15日までケンブリッジ大学天体物理研究所に滞在し、その後2月15日より3月12日までエディンバラに滞在した。その間、Aarseth codeのなかで重要なKS規格化について研究を行なった。これは、球状星団中で連星系ができた場合、その連星系を他の系から切り離して計算する方法である。これがないと球状星団の中で、連星系をうまく取り扱うことはできない。 5.稲垣は3月18日より3月30日までケンブリッジ大学天体物理研究所に滞在し、Aarsethと共同して、球状星団の重力熱力学的崩壊後の研究を行なった。球状星団のあるものは中心部にカスプと呼ばれる密度の高い部分のあることが知られているが、これは重力熱力学的崩壊の結果であると思われている。崩壊後は中心部に連星系が形成されることが多体問題の計算結果から示唆されているが、稲垣はこの形成直後の連星が非常にアクティブであり、崩壊後の中心部の密度分布などに重要な影響を与えることを明らかにした。
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