研究課題/領域番号 |
05044218
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
近藤 豊 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (20110752)
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研究分担者 |
SCHILLER C. 地球圏化学力学研究所, 研究員
SCHMIDT U. 地球圏化学力学研究所, 主任研究員
中島 英彰 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助手 (20217722)
小池 真 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助手 (00225343)
SCHILLER Cornelius Institute for Chemistry and Dynamics of the Geosphere
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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キーワード | 成層圏オゾン / 窒素酸化物 / トレーサー / 硫酸エアロゾル / 火山噴火 / 不均一化学反応 / 中緯度 / 気球実験 |
研究概要 |
長期的な成層圏オゾンの減少減少は緯度45度を中心とした中緯度で顕著で、高緯度では更に大きなものとなっている。これはフロンが分解してできる活性な塩素酸化物がオゾンを破壊している為と考えられる。しかし観測されたオゾンの減少は気相反応過程のみでは説明できない。硫酸エアロゾルや極域成層圏雲などの微粒子上での窒素酸化物が関与した不均一化学反応過程が重用な役割を果たしている可能性が高い。しかし、大気中で実際に起きている不均一化学反応過程を実証した例は極めて少ない。ここではオゾンの破壊が顕著な中緯度(フランス)でオゾン破壊の化学反応システムを構成する多くの大気組成の高度分布を同時に気球で測定することにより不均一反応過程を解明することが大きな目的である。特に、1991年6月にPinatubo火山が噴火し大量の硫酸エアロゾルが成層圏に生成された。現在でもその影響は残っており、エアロゾル増加の状況下の観測は、一種のactive experimentとしてエアロゾル不均一反応の役割をより明確にするということも研究対象であった。 本年度に北緯44度に位置するフランスの気球実験場で成層圏オゾン破壊の化学反応に関連する大気微量成分の気球観測を実施した。1994年1月に一酸化窒素(NO)、硝酸(HNO_3)、反応性総窒素酸化物(NO_y)、オゾン(O_3)、エアロゾル、を測定する装置をフランスのAire sur l'AdourにあるCNESの気球実験場に輸送した。またドイツ側は塩素化合物、一酸化二窒素(N_2O)、メタン(CH_4)、水蒸気(H_2O)の測定器を準備した。小池及び中島の両名及びドイツの研究者はこれらの測定器を気球実験場で一つのゴンドラに組み立た。2月初めに気球実験を行ないこれらの成分の高度10kmから32kmまでの高度分布の観測を行なった。詳しいエアロゾルの粒径分布が測定された。この結果、20km以下の高度で硫酸エアロゾルの濃度が依然として平常時より高いことが分かった。また20km以上では、平常時に近い値に戻っていることが、観測された。測定器は無事回収され、実験終了後、中島はドイツの地球圏化学力学研究所の設備を利用して気球測定器の校正を行なった。特にNO_y測定で使用される金触媒の低圧及び低温下での動作特性を詳しく実験した。またNO,NO_y,エアロゾル測定装置のポンプの低圧及び低温下での吸引効率を詳しく測定した。この実験結果は今回の観測データを精度良く解析するために重要なものであり、これらのデータの解析を行なっている。 一方ドイツ側は塩素化合物、一酸化二窒素(N_2O)、メタン(CH_4)の分析に必要な大気サンプルを回収することができた。現在ドイツの地球圏化学力学研究所でサンプルの精密なガスクロマトグラフィー分析を実施している。 この時期ヨーロッパのSESAME観測キャンペーンが実施されており、ヨーロッパを中心に地上からのリモートセンシングが継続的に行なわれた。われわれのスウェーデンのキルナ(北緯68度)や、北海道にある名古屋大学の母子里観測所(北緯44度)でNO_2,O_3の全量を連続的に測定した。これらのデータも気球データと合わせて解析する予定である。 更に実験終了後ドイツの地球圏化学力学研究所で日独共同で1987年からこれまでに日本及びドイツがフランス及びスウェーデンで得た気球観測データを共同で解析した。特に下部成層圏でN_2OとNO_yの間に直線的な関係が成り立つことが見出された。これは中緯度や極域での窒素酸化物の収支、窒素酸化物間での分配を調べる上で極めて役に立つ関係である。また1983年よりフランス測定されたNOの観測データをヨーロッパで得られたライダーエアロゾル観測と比較した。一般的に火山噴火の影響が見られる時期にNO濃度が低いことが分かった。このデータを用いて不均一反応過程の効果を数値モデル等により定量的に評価する作業を継続的に行なっている。
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