研究分担者 |
MASSIOT D. フランス国立研究機構, 高温物理学研究所(CNRSーCRPHT), 主任研究員
GERVAIS M. フランス国立研究機構, 高温物理学研究所(CNRSーCRPHT), 主任研究員
GERVAIS F. フランス国立研究機構, 高温物理学研究所(CNRSーCRPHT), 次長
COUTURES J.P フランス国立研究機構, 高温物理学研究所(CNRSーCRPHT), 所長
下川 繁三 北海道大学, 工学部, 助教授 (70001302)
川崎 晋司 北海道大学, 理学部, 助手 (40241294)
前川 英己 北海道大学, 理学部, 助手 (60238847)
MASSIOT Dominique CNRS, CRPHT . Chief Researcher
GERVAIS Froncois CNRS, CRPHT . Vice Director
COUTURES Jean-Pierre CNRS, CRPHT . Director
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研究概要 |
本研究では、各種構造解析手段を駆使して高温無機材料、特にアモルファス相(ガラス及溶融液体)の構造を原子レベルで明確にすることを目的とした。また、高温その場観察のための装置開発と、その装置を利用した測定とを同時進行的に行った。特に、最近双方で独自に開発した高温NMR装置の相互利用により、多核種でのNMR測定から高温無機材料の構成元素の局所構造を明らかにすることを主要目標にした。 時期が限られていたこともあり、最終的に、以下に述べる3点を重点課題とした。 1.高温NMR装置の開発と、それを用いたケイ酸塩融体中のナトリウムイオンの局所構造の研究 各種組成のケイ酸塩融体について1700℃までの温度下で^<23>Na核のNMRスペクトルを得た。特に、ナトリウムケイ酸塩、ナトリウムアルミノケイ酸塩について重点的に測定を行った。高温溶融状態でのナトリウムのNMR化学シフト値は、大きな組成依存性を示し、塩基性が増加するとともにプラス方向へのシフトが見られた。このことは、ナトリウムに配位している酸素イオンの電子状態の変化に対応するものである説明できる。また、構造既知の結晶の化学シフト値と比較することによりナトリウムイオンの配位数を見積もった。結晶の化学シフト値も同配位数のもので比較すると、融体と同様な組成依存性を見せ、それを考慮にいれるとナトリウムイオンの配位数は7程度であることが見積もられた。また、ナトリウムのNMR横緩和時間の温度依存性はナトリウムイオンの拡散の活性化挙動と良く一致した。今後、^<27>Al,^<25>Mgなど多核種に拡張することで、多面的にケイ酸塩融体の構造に迫ることができるものと考えている。 2.鉄を含むケイ酸塩ガラス、融体の可視-赤外吸収スペクトル測定 鉄イオンを大量に含むケイ酸塩ガラスを作成し、可視-紫外吸収スペクトル測定を行った。このテーマの目的とするところは、鉄の濃度の増大とともにFe(II)-O-Fe(III)(II,IIIは2価、3価を意味する)の様に電荷の異なる同一イオン種が隣り合う機会が増し、電荷移動吸収スペクトルが得られる可能性を確かめようとするものであった。時間的制約と、過密な測定器利用スケジュールのため、充分な測定はできなかった。しかし、Fe_3O_4を10mol%含み、窒素気相のもとで調製したガラスのスペクトルは、広く可視部に吸収が見られた。これは、特定の波長でのピークではないが、半導体に見られるバンド巾以上の広い吸収に相当する様に見られた。Fe_2O_3のみを含み空気中で調製したガラスにはこのようなピークは見られなかった。 3.スピネルの秩序-無秩序転移の動力学(^<27>Al NMR) スピネル(MgAl_2O_4)は、類似化合物に地球構成物質を含むなど興味深い物質であるが、昇温にともない4配位席と6配位席の間に交換反応を起こし、秩序-無秩序型の構造相転移を引き起こすことが知られている。従来、急冷によって得られる試料によって決定されていた秩序-無秩序度を、今回その場高温NMR法により定量を試みた。最初、6配位席にあるアルミニウムイオンは昇温と共に700℃以上で4配位席と交換し始めることがその場測定により観測され、それぞれの配位席にあるアルミニウムイオンの数を定量することが出来た。さらに温度を上げ、1400℃以上の温度になると4配位の場所に鋭いピークが観測された。このことは、高温領域で4配位席の間で交換反応が非常に早く起こっていることを示唆する。 また、天然試料を一定時間700℃で熱処理し、その後急冷して得た試料の室温でのMAS-NMR測定から、4配位アルミニウムの量(無秩序度)を熱処理時間の関数として得ることができた。現在、解析中であるが反応論的に記述することが可能であると考えている。今後、系統的に温度変化を追うことで、この転移の動力学的性質にせまることができると考えている。 本学術共同研究においては、研究期間が非常に短かったこともありいずれのテーマについても、フランス側の共同研究の成立なども含め、継続的な研究交流が今後必要であると考えている。また、これら3テーマ以外に、本共同研究により、水を含む高温-高圧急冷曹長石ガラスの^<17>O NMRによる構造解析の研究の糸口をつけることができた。
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