研究課題/領域番号 |
05045014
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
高柳 先男 中央大学, 法学部, 教授 (70055169)
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研究分担者 |
エチエンヌ ブルーノ エクス=マルセイユ第III大学, 教授
ブリネ ジャック エクス=マルセイユ第III大学, 教授
フック グレン シェフィールド大学, 教授
ギャンブル アンドリュー シェフィールド大学, 教授
酒井 由美子 中央大学, 法学部, 助教授 (60196053)
中島 康予 中央大学, 法学部, 助教授 (90217729)
植野 妙実子 中央大学, 理工学部, 教授 (20151821)
有沢 秀重 中央大学, 法学部, 助教授 (20119530)
古城 利明 中央大学, 法学部, 教授 (70055185)
江川 潤 中央大学, 法学部, 教授 (80076926)
BOURRINET Jacques The University of Aix-MarseilleIII
HOOK Glenn The University of Sheffield
GAMBLE Andrew The University of Sheffield
ブルーノ エチエンヌ エクス=マルセーユ第III大学, 教授
ジャック ブリネ エクス=マルセーユ第III大学, 教授
グレン フック シェフィールド大学, 教授
アンドリュー ギャンブル シェフィールド大学, 教授
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研究期間 (年度) |
1993 – 1995
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研究課題ステータス |
完了 (1995年度)
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配分額 *注記 |
6,000千円 (直接経費: 6,000千円)
1995年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1994年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1993年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 欧州統合 / 企業の現地化 / エスニック紛争 / アイデンティティの危機 / 相違への権利 / シェンゲン協定 / 移民規制 / 人権抑圧 / 欧州統合の深化 / 主権委譲 / 日系企業の現地化 / 企業の国際性 / 対立と協調 / フランスの主導性 / ガバナンスの危機 / 移民と外国人排斥 / 異文化理解 / 社会的欧州 |
研究概要 |
1 欧州連合(EU)は、99年には通貨・経済統合と共通の安保・外交政策による政治統合を実現することになっている。これは単にヨーロッパばかりか、国際社会全体の構造変動をもたらし、21世紀の世界秩序の形成に大きな影響をあたえる。政治、経済、文化的に深い関係をもってきたわが国にとっても、欧州の行方はきわめて重要な意味をもつ。本研究は、1)欧州統合と日欧関係、2)欧州統合とエスニック紛争、3)欧州統合と移民規制に焦点をあてながら、欧州統合の政治社会学的意味を問いつつ、国際的変動の諸相を明らかにするために行われた。研究の結果、とくに重要だと思われる点は以下のとおりである。 (1)欧州統合と日欧関係については、とくに日系企業の現地化と異文化摩擦をテーマにして、その英仏における実態分析を試みた。その結果、両国における日系企業の現地化過程に顕著な差異はなく、一般的には成功しているといえる。実際、深刻な異文化摩擦は発生していないし、雇用の促進や技術移転を高く評価されている。けれども、日系企業の現地化の成功は、いわゆる「日本化」、すなわち日本的経営が、文化として受容され、浸透した結果ではなくて、むしろ企業の生産技術の国際的優位という普遍的な要素によるところが大きい。また日系企業の経営が、生産過程での人間疎外の問題を解決した。真の意味でのポスト・フォーディズムのモデルといえるかどうかにも疑問が残る。 (2)欧州統合とエスニック紛争については、英仏間の共通性よりは相違のほうが大きい。英国では北アイルランドをめぐるエスニック紛争が武力闘争の停止から対話による和平へと転じているが、欧州統合の深化過程と相関関係にあるかどうかは簡単に結論できない。むしろ英国は、国内のエスニシティを超えて「ブリティッシュネス」を喚起するようになっているが、これは欧州統合の深化とともに余儀なくされる主権の喪失にたいする危機意識の所産といえる。ただしここで主権の喪失とは、国家主権ではなく議会主権である。他方フランスでは、エスニック少数者に認めた「相違への権利」が「契約的アイデンティティ」にもとずくジャコバン国家を変質させ、アイデンティティの危機を煽るポピュリスト・ナショナリズムがエスニック紛争の根源となっている。また人権、少数民族の保護について「欧州裁判所」がフランス政府に不利な判断をくだす可能性があるが、欧州統合を主導しているフランスが国内法のヨーロッパ法への調和化を余儀なくされる点でも、ジャコバン国家の変質は不可避である。こうして統合欧州の政体が連邦か連合なのか、あるいはヨーロッパ規模でのジャコバン国家化なのかが最も重要な実践課題となる。 (3)欧州統合と移民規制の問題は、域外非ヨーロッパ人にとって統合欧州の意味空間を考えるうえで格好の事例である。本研究では域内移動の自由を定めたシェンゲン協定と域外から移民規制のための英仏の政策比較を規制される側の人権に関連させて研究した。シェンゲン協定に加盟していない英国の場合、国境管理強化によって不法移民を比較的容易に排除できるが、他方で香港の中国返還時に予想される移民や難民の非人種的対応の可能性が問われているし、在留している移民の家族呼び寄せについても制限の方向に向かっている。他方フランスでは、国籍法、身分証明法、移民統制法、いわゆるバスクワ三法の導入によって、国境管理から滞在者管理へと変わり、いわば「肌の色による選別」といった人権抑圧が危惧されている。第二世代に認められた「相違への権利」の寛容性との関連をどう判断すべきかむずかしい。 2 以上、本研究に個別テーマに焦点をあててなされているが、それらを通して欧州統合の政治社会学的意味と世界システムにおける統合欧州の歴史的意味を明らかにするようこころがけてきた。ミクロ事例研究なしにはマクロ理論研究は意味をもたないと考えたからにほかならない。
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