研究課題/領域番号 |
05045034
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研究種目 |
国際学術研究
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 大学協力 |
研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
長友 隆男 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (70052868)
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研究分担者 |
魏 光普 上海大学, 材料科学系, 教授
張 志林 上海大学, 材料科学系, 教授
大本 修 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (60052693)
WEI Gaung-pu Shanghai University, Professor
ZHANG Zhi-lin Shanghai University, Professor
米井 健治 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (50052816)
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研究期間 (年度) |
1993 – 1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
4,000千円 (直接経費: 4,000千円)
1994年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1993年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 硫化錫(SnS) / 硫化第二錫(SnS_2) / 真空蒸着 / 価電子制御 / 物性評価 / 光起電力効果 / 薄膜太陽電池 / SnS / SnS_2 pnヘテロ接合19GA01:棚村浩匡、野口英智、野口純司、長友隆男、大本修 / 硫化錫 / ヘテロ接合 |
研究概要 |
本研究の課題の一つである硫化錫(SnS)薄膜のp、n制御を行ったが、芝浦工大の研究グループでは、n形伝導のSnS薄膜を得ることができなかった。これはSnS薄膜の結晶欠陥を減らし、またそれらの欠陥を十分に不活性にすることができないことが主な要因であり、アンチモン(Sb)などのn形ト-パントを添加して抵抗率を大幅に変化させることはできるが、n形伝導に変えることはできなかった。上海大学(旧上海科学技術大学)材料科学系の張志林、魏光普両教授の研究グループではスパッタ法で作製したアンチモン(Sb)ドープのSnS薄膜を水素中400℃、5時間の熱処理することによって、抵抗率〜2Ωcmのn形伝導膜を得ているが、SnS pn接合を得ることができなかった。 上記の理由から昨年度の成果の一つである硫化第二錫(SnS_2)を積極的に用いることにした。SnS_2は間接遷移形半導体ではあるが、n形伝導を示し、エネルギー間隙が〜2.3eVであるのでn-SnS_2/p-SnS薄膜太陽電池の"窓"材料として用いられた。前年度の研究では、SnS薄膜の基礎吸収端は1.48eV付近で直接遷移であると報告したが、その後の研究で1.20eV近傍に間接遷移形の基礎吸収端が存在することが明らかになった。SnS薄膜の結晶性が良くなり、組成が化学量論組成になれば、直接遷移形および間接遷移形の両方の光学遷移が観測された。 出発原料としてSnS_2粉末(99.99%)を用い、真空蒸着によってITO(Indium-Tin Oxide)透明電極上にSnS_2、SnSを真空を破らずに順次堆積させ、最後にオーミック電極として銀(Ag)を真空蒸着してダイオードを作製した。SnS_2、SnSの組成制御は坩堝(るつぼ)の温度(蒸発源の温度)を変えることによって行った。しかし、SnS_2、SnS膜を作製する最適な温度が一致していないので、困難を伴った。 n-SnS_2/p-SnSヘテロ接合ダイオードのダイオード特性はダイオード因子n=1.91、飽和電流密度J_0=6.8×10^<-6>A/cm^2を得た。n-SnS_2/p-SnSヘテロ結合ダイオードの接合容量(C)の電圧(V)依存性は1MHzの高周波で測定され、その1/C^2-Vプロットが直線となり、直線の傾きから空間電荷密度1.2×10^<16>/cm^3、拡散電位V_d=0.057V、空乏層の厚さW=108nmを得たが、矛盾が多い。 n-SnS_2/p-SnSヘテロ接合ダイオードの光起電力効果は、100mW/cm^2の光をITO透明電極側から照射し、開放電圧Voc=0.09V、短絡電流密度Jsc=0.48mA/cm^2、曲線因子F.F.=0.32、光電変換効率η=0.014%を得た。この素子の光応答は400nm〜1200nmの間で観測され、50%以上の感度を持つ領域が480nm〜700nmであった。 上記のように一つの蒸発源SnS_2から蒸発源の温度を変えてn-SnS_2/p-SnSヘテロ結合を形成したが、結果は望ましいものではなかった。ヘテロ結合で問題となるSnS_2およびSnSの電子親和力を調べた。Ag/n-SnS_2ショットキーダイオード、およびAl/p-SnSショットキーダイオードを作製し、その障壁の高さからそれぞれの電子親和力を求めた。電子親和力は、n-SnS_2では4.67eV、p-SnSでは3.72eVとなった。これらの電子親和力のデータからn-SnS_2とp-SnSの組み合わせは適当ではなく、p-SnSを光吸収材料として用いるとすればそれに見合う電子親和力の小さい材料(仕事関数の小さい)を選択する必要がある。p-SnSの電子親和力がド-ピング・ステップにもよるが3.72eVと小さいので、良好な組み合わせとなる"窓"材料の探索は難しい。 本研究の成果の一つであるがSnSに関連する材料でセレン化錫(SnSe)があり、〜1eV付近に間接遷移形の基礎吸収端をもち、吸収関数が〜10^5cm^<-1>以上と大きく、現在、太陽電池用材料として検討しているところである。
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