研究分担者 |
張 国艶 東北農業大学, 食品科学系, 助手
崔 成東 東北農業大学, 食品科学系, 教授
りゅう 武林 東北師範大学, 生命科学院, 教授
久保 康隆 岡山大学, 大学院自然科学研究科, 助手 (80167387)
稲葉 昭次 (秋葉 昭次) 岡山大学, 農学部, 教授 (90046491)
CUI Chengdong Northeast Agricultural Univ., Dept.of Food Sci., Professor
ZHANG Guoyan Northeast Agricultural Univ., Dept.of Food Sci., Research Associate
黄 剣 東北師範大学, 生命科学院, 講師
〓 武林 東北師範大学, 生物系, 教授
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研究概要 |
1.チュウゴクナシ果実の成熟特性と貯蔵特性 (1)日本産チュウゴクナシ:日本産チュウゴクナシ13品種について,エチレン生成の面から基本的成熟特性を比較検討した。さらに,中国側で研究対象とした中国産チュウゴクナシ品種を持ち帰り(輸入特別許可農林水産省指令5神植第1288号及び6神植第1270号),比較のため供試材料に加えた。その結果,チュウゴクナシは傷害型エチレン生成はすべての品種でみられるが,成熟型エチレン生成は品種によって認められるものと,認められないものがあることが明らかになった。そこで,エチレン生成系について比較検討した所,成熟型エチレン生成が認められない品種は,ACC合成酵素活性が制限要因になっていることが推察された。 (2)中国吉林省産チュウゴクナシ:吉林省の主要品種である苹果梨を主体とし,その他大梨,苹博梨,香水梨を加えた4品種について,呼吸活性,エチレン生成及び内容成分含量の変化から樹上成熟特性と追熟特性を比較検討した。その結果,苹果梨の呼吸活性とエチレン生成が樹上及び収穫後のいずれでも他の品種に比べて低いことが明らかになり,貯蔵性が良好であると推察された。そこで,実際に種々の形態での貯蔵試験を穴蔵貯蔵庫で実施し,現在なお調査中である。現時点での判断では4月下旬まで十分貯蔵可能と思われる。 (3)中国黒竜江省産チュウゴクナシ:黒竜江省産北方系チュウゴクナシ伏香梨,秋香梨,竜香梨及び晩香梨の4品種について,呼吸活性,エチレン生成及び内容成分含量の変化から樹上成熟特性と追熟特性を比較検討した。その結果,晩香梨の呼吸活性及びエチレン生成が樹上及び収穫後のいずれでも他の品種に比べて特異的に低いことが明らかになり,この品種が貯蔵性に秀れていることが推察された。そこで,実際に穴蔵貯蔵庫で種々の形態での貯蔵試験を実施し,現在なお調査中である。現時点での判断では4月下旬まで十分に貯蔵可能の見通しである。 (4)低温耐性:日本産チュウゴクナシ13品種の全果及び果実から誘導したカルスについて,5℃下での低温障害発生状況を調査した。その結果,果肉褐変及び果肉電解質漏出度からみて,4品種では明らかに低温障害の発生が認められたが,その他の品種では障害発生は認められなかった。このような低温感受性の品種間差異の原因を探るため,膜リン脂質脂肪酸組成,トノプラストATPase活性,アブシジン酸含量,プロソン含量等の変化を比較検討したが,この調査の範囲では品種間差異を説明することはできなかった。 2.チュウゴクナシ果実のエチレン生成系の遺伝子レベルでの解析 チュウゴクナシは品種によって成熟型エチレン生成がみられるものと,みられないものがあることが明らかになった。そこで,エチレン生成系の二つの律速酵素であるACC合成酵素とACC酸化酵素をコードする遺伝子について品種間比較を行った。果実より改良SDS-フェノール法で全RNAを抽出し,これから合成したcDNAをテンプレートとしてPCR増幅を行った。増幅遺伝子断片を大腸菌プラスミドに導入,クローニングを行い,ACC合成酵素遺伝子について6種類,ACC酸化酵素遺伝子については3種類の遺伝子断片を得ることに成功した。これら遺伝子断片の塩基配列及び推定アミノ酸配列を調査した上,既報の他の果実より得られている遺伝子断片との相同性を検討し,得られた遺伝子断片はACC合成酵素遺伝断片及びACC酸化酵素遺伝子断片であることを確認した。現在,ノーザン分析による個々の遺伝子断片の発現特性調査に鋭意取り組み中であるが,成熟ナシ果実から分析に十分量のRNAを抽出することが予想外に困難であったため、研究に若干の遅れが生じている。しかし,RNA抽出法も苦心を重ねて改良法を見い出し,研究進展にも見通しが立つ状況に至っている。 3.今後の研究の展開:今回の共同研究で,限定された品種ではあるがチュウゴクナシ果実の成熟特性と流通・貯蔵特性が明らかになり,実際の流通・貯蔵技術改善の指針を得ることができたことは大きい成果であった。今後は,別な研究プロジェクトによって,調査品種の拡大をはかる一方,エチレン生成系遺伝子の発現特性調査を急ぎ,さらにサザン分析によるゲノム内機能特性へと研究を深化させてゆく予定である。
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