研究概要 |
日野,辻,片峰らは,長崎で年間15,000例の妊婦の抗体検査を継続して行っている.抗体陽性率は4-5%で,未だ明らかな減少傾向はみられない.長期母乳栄養児の感染率約17%に対して,人工栄養児の感染率は,約3%だった.臍帯血の検査から,人工栄養児の感染の大部分は少なくとも子宮内感染ではなさそうに見えた.1987年に高抗体価妊婦は,感染を起こしやすいと報告したが,米国との合成ペプチドを用いた共同研究により,母乳哺育群では高env抗体価は感染と相関し,人工栄養群では高抗体価は非感染と相関した(投稿準備中).このことは,三好らの抗体分画による感染防御動物実験と一致する.日野らは,高感度半定量PCRによって,抗HTLV-1抗体価とPCRによる感染細胞数が非常によく相関すること(r>0.8)を見つけた(投稿中).三好らは,HTLV-1感染日本人より及びHTLV-2感染米国人より精製したIgGを注射したウサギに,それぞれメラネシア株HTLV-1に感染した細胞,HTLV-2に感染した細胞を24時間後に与え,感染防御能を観察した.一條らは,抗HTLV-1抗体の感染阻止能をin vitroで検査した.XC細胞融合阻止反応では,HTLV-1感染に有効なのは抗env^<175-199>に対する抗体であったが,キャリアのPBL培養による抗原発現阻止では,抗p19^<100-130>が有効であることがわかった.永田らは,過去23,000例の妊婦調査を行い,抗体陽性5.5%であった.これら小児の追跡により,人工栄養5.8(6.7)%,短期母乳栄養3.4(4.2)%,長期母乳栄養25(14)%の結果を得ている(括弧内は後方視).人工栄養と短期母乳栄養に有意差はなかったが,長期母乳栄養では有為に感染率が高かった.武(班友)らは,母親の感染経路を詳細な個別調査によって行い,51/246(約20%)が性交による感染であると考えた.
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