研究概要 |
チロシンキナーゼ情報伝達系に於てSH_2/SH_3ドメインを持つ蛋白が重要な役割を果たすことが明かになってきた.SH_2ドメインはチロシンリン酸化部位を認識して結合し,SH_3 ドメインを介して下流へとシグナルを伝える. 我々は新しいSH_2/SH_3蛋白でSH_3-SH_2-SH_3の配列より成るAshをとった.本蛋白は,活性型EGF受容体,PDGF受容体やIPS-Iに結合し,NGF受容体とShcを介して結合した。この結合はSH_2ドメインを介して生じていた.又,SH_3を介してSOS,ダイナミン及び分子量150K,70Kの蛋白に結合した.この結合はSOS及びダイナミンのプロリンに富む配列を認識して生じていた. Ashの抗体を微量注入するとEGF,PDGF刺激によるDNA合成が阻害された.しかし,リゾホスファチジン酸や血清によるDNA合成は抑制されなかった.更にα-AshはEGFやPDGFによって生じる膜のラッフリング現象をも抑制した. これらの結果よりAshはEGF,PDGF,NGF,インシュリンのsignalingの下流に存在し,チロシンリン酸化部位に結合して,そのシグナルをRasの活性化を通してDNA合成へ,ダイナミンを介して分泌へ伝える他,細胞骨格再構築へ至るシグナルをも媒介していることがわかった.
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