研究概要 |
1.細胞増殖因子処理時におけるイノシトールリン脂質結合蛋白質の変動 我々はアクチン調節蛋白質であるα-アクチニン及びビンキュリンがホスファチジールイノシトール4,5-ビスホスフェイト(PIP2)結合蛋白質であることを報告してきた.今回Balb/c3T3細胞を血小板由来増殖因子(PDGF)で処理後,0.2%Triton X-100に不溶な細胞骨格画分と可溶性の細胞質画分に分画し,両画分に存在するα-アクチニン及びビンキュリンに結合したPIP2の変動を検討した所,PDGF処理後5〜15分でこれらの蛋白質に結合したPIP2量が減少することがPIP2-ウエスタンブロット及び細胞の蛍光染色により確認された.このことは細胞膜に存在するPIP2のみならず,蛋白質に結合したPIP2がフォスフォリパーゼC(PLC)により分解されイノシトール1,4,5-トリフォスフェイトやジアシルグリセロールというセカンドメッセンジャーの産生と共に細胞骨格の再構築の調節を行なっている可能性を示唆している. 2.α-アクチニンにおけるPIP2結合部位の同定 トリ胸肉からα-アクチニンを精製しキモトリプシンで処理し,PIP2の結合性を検討した所,PIP2はα-アクチニンのN末側のアクチン結合部位の中に存在することが判明した.次にリジルエンドペプチダーゼで限定分解後,それぞれのペプチドを精製しPIP2が結合しているペプチドのアミノ酸配列を決定した.更にこれに対応する17個のアミノ酸を持つ合成ペプチドはPLCγ及びPLCδによるPIP2の分解を強く阻害した.このことよりこの配列がα-アクチニンにおけるPIP2結合部位であることが示唆された.
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