染色体異常の見られる癌は予後が悪く、悪性度が高い傾向にあることから、この染色体変異は癌化・癌の悪性化の一因を成すものと考えられる。本研究は癌細胞の進展・悪性化の過程での染色体変異とテロメア変異との関連性を、一つの染色体に注目して追求した。 C6細胞株にPhIP(10μM)を投与すると、高頻度にX染色体の構成比の異常を起こすことが明らかとなった。PhIP投与後、2日目に再び細胞をクローン化し、細胞が10^6まで増殖した後、そこからDNAを抽出した。X染色体の5か所のマイクロサテライトをプローブとしPCR反応を行い、PCR産物の示す多型バンドの濃度変化をゲル電気泳動で調べた。X染色体マーカー(DXMit5)のB6特異的バンドがMSMバンドに比べ著しく薄くなっていたことが分かった。この結果はB6由来の不活化したX染色体が脱落し易いことを示している。 さて、この脱落の機構として、X染色体のテロメアからmo-2領域にかけての反復配列に組換え変異が起こり、テロメア機能が損傷されたのが1つの原因であると仮定し、この作業仮説が正しいかどうかを知るためにテロメアの長さを測定した。B6由来のX染色体の組成が低くなったクローンを17株単離し、この細胞小塊を、アガロース・ブロックに埋め込んだ。そのゲル中でDNAを精製し、制限酵素・EcoRI、BstEII、HaeIII、およびAluIで切断した。DNA断片を長さによりPFGE電気泳動法で分画し、そのゲルを乾燥させたものに対し、合成したmo-2プローブおよびTTAGGG配列からなるテロメアプローブをハイブリダイズさせた。テロメアのサイズの変化は検出されるバンドの変化として検出される。現在、実験が終了していない段階だが、テロメアの変異は検出されるが、X染色体のテロメアが特異的に変異を起こすという結論は得られていない。
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