研究概要 |
昨年までにがん関連糖鎖抗原であるシアリル・ルイスX及びシアリル・ルイスaとそのセラミド誘導体の全合成に成功した。さらにそれらの分子中のシアル酸がガラクトースのC-6位に結合した類縁体を化学合成した。これらを用いてセレクチン・ファミリーとの反応性及び転移がん細胞であるリンフォーマ細胞(L5178YML-25)の内皮細胞への転移阻止活性等を測定した。その活性に及ぼす糖鎖の構造要求性を追求するために、シアリル・ルイスXのシアール酸、フコース、ガラクトース及びN-アセチルグルコサミン部分の水酸基やN-アセチル基を化学変換し、エピマー体やデオキシ体の合成を系統的に行った。その合成法はシアル酸の側鎖分子の必要性を調べるためにC-7,C-8C-8エピ-シアール酸を合成し、そのチオグリコシド体に導きガラクトースとα-配糖体結合さ、これをチオグリコシドに導きオリゴ糖鎖に結合させガングリオシド類縁体に導いた。 またフコース部分に関しては、2,3,及び4-デオキシ-フコース及び2,3,及び4-エピ-フコースを合成し、それぞれをチオグリコシドに導き、オリゴ糖鎖にα-グリコシドに導入し、同様にしてガングリオシドに導いた。N-アセチルグルコサミン部は、セレクチンによる認識に直接関係せず、全体の分子構造を固定化する役割を担っていると考え、全体の分子構造に影響を与えると考えられる化学変換を行った。合成が完了した化合物については、まず各セレクチンとの反応性を検討した。その結果、シアル酸の構造は細胞接着に重要ではなく、他の酸性基であるスルフォン酸エステルに置きかえることができること、フコースの構造は重要で、とくにC-3位水酸基は不可欠であることが、明らかとなった。
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