研究概要 |
TNFの抗腫瘍活性の増強と副作用の軽減を目的として、立体構造上、受容体結合部位と考えられているN末端側を中心に、各種TNF変異体を作製し、その腫瘍細胞傷害活性、受容体結合能およびin vivoにおける抗腫瘍効果、致死毒性、血圧低下に与える影響を検討した。 N末端アミノ酸を7個欠失し、さら8、9、10番目のPro,Ser,AspをそれぞれArg,Lys,Argに変化させたTNF変異体471は、intact TNFに比べ、約7倍のL-M細胞傷害性を示した。また、L-929細胞膜表面TNF受容体に対する結合能を、125I標識intact TNFとの競合試験で検討したところ、TNF変異体471はintact TNFの約1/2量で125I標識intact TNFの結合を50%阻害した。すなわち、TNF変異体471はintact TNFに比べ受容体結合能が高いことが明かとなった。 さらに、Meth A細胞移植Balb/cマウスを用い、TNF変異体471のin vivoにおける抗腫瘍活性を検討したところ、intact TNFに比べ著明な腫瘍増殖抑制効果を示した。生存率の面からも、intant TNF投与群の50%生存が投与後37日であったのに対し、TNF変異体471投与群では61日と延長し、5匹中2匹に腫瘍の完全消失が認められた。 一方、TNF変異体471の副作用を、ガラクトサミン負荷C3H/HeJマウスに対する致死毒性(LD50)の面から調べたところ、intact TNFの約1/18と軽減していた。また、TNFの全身投与に際しMTDの規定因子となっている血圧降下作用も、ラットに投与後、尾動脈の収縮期血圧を測定し検討したところ、TNF変異体471ではintact TNFに比べ約1/4に軽減していた。 すなわち、TNF変異体471を用いることにより、抗腫瘍活性の増強と、副作用の軽減が可能であることが示唆された。
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