研究概要 |
本研究は、戦国期真宗の歴史的研究を進展させるために、立ち遅れている西日本地域の真宗寺院の史料調査,とくに本願寺宗主発給文書に焦点をあわせようとしたものである。西日本真宗史研究は一部の地域を除き研究がおくれているが、その原因の一つには基準となるべき寺院文書の整理を含め調査が不十分な点があった。そのため、本研究では(a)本願寺宗主発給文書の分析を行うとともに、(b)基準となるべき寺院文書の整理に着手することに手をつけた。(a)については、兵庫名塩教行寺に所蔵する蓮如「御文」書写本の調査を行い,(b)については、広島県山南光照寺の文書整理に着手した。(a)の成果については、裏面に記した論文にまとめ刊行を期している。また(b)については、触頭寺院としての多量の文書群を確認し、今後の目録作成へのスケジュールをたてた。とくに興味深いのは、寛永年間に光照寺の本未関係が変化した際に、大幅に文書の整理が行なわれているという形跡を確認できたことで、今のところ不明な真宗寺院の文書の伝来が本未関係を軸に行なわれたという仮説を提示できそうだということである。本研究は、着手したばかりで実績を提示しにくいが、山南光照寺という南北朝期から現代、かつ江戸時代では備後触頭として、また、西日本に多数の未寺を有する中本寺の文書群の本格的調査・整理が開始され始めたことが成果であり今後を期する点である。
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