研究概要 |
本年度は、(1)昨年度収集したオーストラリア政府公文書を分析し、同国のアジア太平洋政策(その中核としての対日政策)(2)戦後の英豪関係の分析、を中心に研究を行った。 (1)については、過去数年間に広範囲にわたってオーストラリア政府の文書を収集しており、また本年度も同様の収集を現地で行い、これに基づいて、1960年代初頭までのオーストラリア政府の対日(対米、対アジア)政策の変容の過程を跡づけた。すなわち、アジア情勢の緊迫化とともにオーストラリアの対日政策が「日本を抑制する」政策から「日本を西側の一国」へ変換させる政策へと変化してきた過程を一次資料で明らかにした。 (2)に関しては、特に、コロンボ援助計画,SEATO条約の発足・締結とその後の発展の経緯をオーストラリア、イギリス、アメリカの公文書を基礎に検討した。中国をはじめとする共産諸国のアジア進出を前に西側諸国の政治・戦略経済的な利益を保護するために英連邦諸国がイニシアティブをとる形でコロンボ計画が発足し、その過程でアメリカが「資金供給国」として重要な役割を期待されていたこと、また、アジア諸国との戦後の複雑な問題を抱えながらも日本の技術力を利用することがアジアの安定に不可欠と認識され、イギリスが主導する形で日本のコロンボ計画への参加がこころみられたこと、そしてオーストラリアも国内に強い反日感情を抱えながらもイギリスの立場を支持していったことがなど明らかにされた。 また、以上の研究の過程で、アメリカおよびオーストラリアの専門家との意見交換および日本の専門家との研究会合を行い、有意義な示唆を受けた。
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