研究概要 |
土中の遺跡探査においては,土質の僅かな差異や埋設物の形状などを把握することが重要である。電磁波が伝搬しにくいが音波はよく伝搬する含水率の高い土中や泥土中での遺跡探査では,音波を利用した探査法が非常に有効であろうと考えられる。本研究では不均質媒質である土中の音速分布により引き起こされる音波の屈折を積極的に考慮し,逆に屈折を引き起こす音速分布の変動を映像化する新しい屈折透過型CTによる遺跡探査法の開発を目的としている。本年度は,地中伝搬音波の伝搬音波の測定法,伝搬音波の解析方法,及び,伝搬時間より音速分布を求める方法の基礎的検討を行った。まず,表面の音速が300m/sで深さ数mで千数百m/sの音波に達するような含水率の高い土中の状況では十数mの音波伝搬距離で10〜30msの伝搬時間で音波が到達するが,音波の到達深度は数mである。このとき音波伝搬時間測定精度が1ms程度あれば地中音速が層構造だと仮定することで反復逆演算により音速分布を求めることができることがわかった。 次に音波ビーム中で複数の音波伝搬経路が存在する場合に,複数の音速成分による受波信号の周波数領域での複素平面での変化から,信号中に含まれる成分を分離し,1ms程度の精度で音波伝搬時間を求める方法について示した。 また,軸対称な地中での音波伝搬を計算するため,外部無限領域の音場を球面調和波により展開し,仮想境界球面上の音響アドミタンスとして定式化し,広く用いられている有限要素法の系マトリクスに加えるだけで,無限領域を考慮した軸対称音場を計算することができる。さらに外部無限領域の音場も球面調和波展開の形で記述され,容易に地中の音場を求めることができる。 現在,これらを組み合わせて,高精度な地中情報を得るための検討を進めており,遺跡探査に有効な実際的な処理法を構成する予定である。
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