乳幼児期のカテゴリ化や概念行動に含まれる「類似性認知」の諸様相を明らかにすることが本研究の目的であり、このテーマに関して本年度に行なった研究の内容とその実績は、次の様にまとめられる。 (1)先ずクリティカルな発達期と、日常生活場面におけるこどもの類似性認知の諸特徴を知るために、予備的調査において、母親との面接(20名)を実施した。この結果から、本研究テーマに関して2才期以降の発達期にきわめて重要な行動的変化があることが示唆された。(2)この結果に基づいて、2才期(2:3か月)から4才期(一4:7か月)にわたる乳幼児の計55名を対象にして、この発達期における乳幼児が、外界の日常的な対象物の類似性をどう認知し行動するかについて検討するために、実験的研究を実施した。特に、本研究では、模倣分類課題を用いたが、この方法によって、対象(物)の関係的類似性の認知と、その処理能力がどのように獲得されていくかを検討することに焦点をあてている。関係的類似とは、単に事物の特徴そのものの類似性(たとえば、色が似ている/同じ)の照合ではなく、「色」という次元として同一性(赤と赤のマッチングではなく、赤と青は色次元として同一)の認知である。こどもの多次元構成の対象物からの分類行動が、モデルが示した特定の属性のマッチングではなく、モデルの行動の次元的同一性(関係性)を認知した関係的行動として可能になる発達期を同定することができた。主な結果は、関係的類似の認知には対象の熟知性が関係していること、熟知性の高い対象には2才期の後半から、また、比較的抽象度の高い次元に関する関係性については、3才期中期以後に達成されることが明らかになった。
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