研究課題/領域番号 |
05207115
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪外国語大学 |
研究代表者 |
吉川 利治 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (60030144)
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研究分担者 |
菅谷 成子 名古屋女子大学, 短期大学部, 助教授 (90202126)
渡辺 佳成 岡山大学, 教養部, 助教授 (80210962)
桃木 至朗 大阪大学, 教養部, 助教授 (40182183)
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研究期間 (年度) |
1993
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研究課題ステータス |
完了 (1993年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
1993年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | タイ的原理 / 創られた伝統 / 華夷意識 / 中国化 / 王権 / 支配のイデオロギー / メスティーソ / 華僑・華人 |
研究概要 |
吉川は、タイの13世紀に製作されたラームカムヘーン王碑文が19世紀中頃に創作されたとする偽作説を踏まえて、その内容に盛られた国王と仏教と民衆の結びつきがタイ固有の政治的伝統として強調されていく過程で、「民族・宗教・国王」の三位一体を「タイ的原理」とする、明確な国家イデオロギーに発展させていった可能性を考え、その過程を追求する。つまりタイの伝統的政治理念は、19世紀から20世紀の初めにかけて行われた、新しい歴史と伝統の創出のなかで始まると推測した。 桃木は、中国と対等な「もうひとつの中華」を自認するベトナム型の華夷意識に着目し、その形成と変遷を、世界像(あるべきベトナムの領域とベトナムに服属すべき「蛮夷」の範囲はどこまでか、ベトナムの東西南北はとはどんな世界か)と歴史像(どんな歴史ゆえにベトナムは世界の中心たりうるのか)の両面から考察した。 渡辺は、ビルマの王権研究を行うなかで、正統性論理の絶対性と現実の脆弱性の齟齬の分析から、王権の時代性、固有性を明らかにするという手法を確認した。また正統性論理の中で、仏教の理念では全世界を支配ししかも非暴力性、非継承性が強調され転輪聖王の概念が、本来無限であるはずの支配領域が限りあるものとして意識され、有限の支配領域が時代とともに変化していることを明らかにした。 菅谷は、18世紀のマニラの中国人移民社会の分析から、18世紀半ばのアランディア総督に始まり半世紀にわたって実施されたスペイン政庁による非カトリック中国人追放策が、マニラを中心とする中国人移民社会を従来の出稼ぎ型からカトリックからなる小規模な定住型の社会に変容させ、その結果、中国人移民社会が民族共同意識の形成過程でフィリピン正統に構成する要素となった中国系メスティーソを生み出す母胎となったことを指摘した。
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