研究概要 |
1 ニューラル・ネットワーク(以下、NNW)は(未だ)法的判断の生成に適していない。(1)法的判断は依拠した法源を示すことが必要であるが、NNWには、以下の理論的制約から作動を正当化する説明機構が存在しない。〈NNWの学習則〉は任意の連続関数(n次元立方体[0,1]^nから実数Rへの関数形をした任意の関数表現)は3層feed-forward NNWにより、必要な精度で表現できることを保証しているが、存在定理に過ぎないため〈隠れ層〉の伝達関数がいかなるものかについて指示を与えない。正当化機構の接続が期待される。(2)NNWはプログラムなしに一定の操作を「学習」するが、実現すべき目標値(満足すべき重みヴェクトルの条件)は人が与えねばならず、問題状況に応じた目標値を生成しない。従って、一般に法発見には適さない。 2 一般的に、ファジー推論は法的判断に適さない。法的判断では次のような戦略を採用する場合が多い。(1)曖昧概念をfuzzyな概念としてではなく、ambiguousな概念として扱う。(2)多義な概念の1つの意味を選択し、曖昧概念の曖昧さをまず縮減した上で推論にかけ、弁証法的に漸次修正する。 3 法に欠缺がある場合、(法的ルールではなく)法的原理が必要であるが、原理はルールと違い、関連する法原理が重複して全体的に関与し、問題状況と相関的に相互の比重を変える。しかも、問題になる時点で完備したリストとして与えられていない。静的で、課題環境・その中での内部表現・選択肢・探策・結果の評価関数が定義された法律エクスパート・システムは、easy caseでしか適切な法的判断を生成しない。 4 比喩・例外や類推を人工知能の一手法・frame理論で扱えるという意見もあるが(ex.P.H.Winston)、この理論の枠内で、比喩・例外、類推を正しく表現することは困難で、新しい手法のデザインが必要である。
|