研究概要 |
1.平面配位子の修飾.ポルフィリンの周辺にメチル基,ブチル基を導入して反応中心に対する立体効果,極性変化の効果を検討した.その結果,反応中心に対して極性効果よりも立体効果が大きな要因となっていることが分かった.2.活性種の検討.立体効果を用いて反応を緩やかに進行させ,可視スペクトル,NMR,ESRスペクトルによって.中間種の捕捉に成功した.その結果,全反応機構は明反応と暗反応に分けて解析できることが明らかとなった.明反応では光還元錯体と酸素から,スーパーキオソ錯体が生成し,基質存在下では基質の過酸化物と還元錯体が生成する.暗反応においては,基質過酸化物と還元錯体が再度結合し,アリルペルオキソ錯体が生成した後,0-0結合の開裂によって,アリル水酸化物とオキソ錯体が生成する.オキソ錯体は基質と反応してエポキシドを与え,還元錯体が再生する.3.活性種の動的挙動の検討.中間種の消長を分光学的手法によって追跡し,触媒サイクル駆動のためには初期光照射によって活性種を生成させることが必要であることが明らかとなった.光反応過程に対して暗反応過程の進行が遅いことが明らかとなった.4.総括.以上の結果および前年度までの結果を総括して,次に示す全反応機構が確立された.Soret帯の励起によってポルフィリン錯体で分子分子内電子移動が進行し,還元錯体-ラジカル対が形成される.還元錯体が分子酸素及び基質と反応して基質化酸化物を与える.後者が触媒反応の活性種であり,以降の反応の加速が,本触媒反応の全速度及び生成比に決定的影響力を持つ.
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